芸能

『愛の讃歌』から70年目 女性作詞家の草分け・岩谷時子の足取りをたどる

本誌写真部

2013年『岩谷時子賞』の様子。この年、岩谷は97才でこの世を去った(女性セブン写真部)

『愛の讃歌』(越路吹雪)、『男の子女の子』(郷ひろみ)など、数々のヒット曲を世に送り出した作詞家・岩谷時子(享年97)。どのような思いを詞に込めていたのだろうか。『愛の讃歌』を手がけてから70年目を迎えるいま、彼女と親しかった人々の話から探ってみよう。(本文中一部敬称略)【全3回の第1回】

謎のベールに包まれた岩谷時子の「本心」

 女性作詞家の草分け的な存在である岩谷時子。作詞家として活躍していた彼女にはもう1つの顔があった。それは、シャンソン歌手・越路吹雪(享年56)のマネジャーを務めていたことだ。

 当時をよく知る音楽ディレクターで『岩谷時子音楽文化振興財団』の理事を務める草野浩二さんは、次のように語る。

「岩谷先生は女学校の先生みたいでしたね。下ネタは一切ダメ。とにかくまじめなかたでした」

 NHKドラマスペシャル『ごめんねコーちゃん』(1990年)で、岩谷時子役を演じた俳優の竹下景子も、草野さんと同様の印象を持っている。

「とにかく楚々としている印象です。撮影前にお会いしたときは、私が演じることをとても喜んでくださっていてうれしかったですね。

 岩谷さんはご自身のことを積極的に話されるタイプではなく、表に出ることも好まれなかったようです。私にも『これが最後の一冊なの』と、ドラマの原作となったご自身のエッセイをくださいました。きっと“これを読んで、いろいろと察してくださいね”ということだったんだと思います」(竹下)

 2人が語るように岩谷と接した人は、誰もが「聖女を絵に描いたような女性」という印象を持ったようだが、詞の世界では見事に男女の心の機微を描き分けていた。

「シャンソン歌手の岸洋子さん(享年57)の『夜明けのうた』という曲があります。これは、もともと坂本九さん(享年43)が歌っていた『夜明けの唄』のカバーで、いずれも岩谷先生の作詞です。一人称の“僕”を“あたし”に変えているだけで、ほかはまったく同じ。なのに、坂本九さんの歌は勤労学生の応援歌で、岸洋子さんはラブソング。まったく印象が違うのがいまも不思議に思います」(草野さん・以下同)

 ドキリとするような男女の情愛を見事に描いた曲もある。歌手で女優の沢たまきさん(享年66)の『ベッドで煙草を吸わないで』1966年)がまさにそれだ。この曲で岩谷は、ベッドの上でたばこを吸おうとする恋人に、火を消してほしいと願う女性を描いている。

「まったく性的なにおいを感じさせない岩谷先生に、どうしてセックスが終わった後の男女の情景が描けたのか不思議に思い、聞いてみたことがあるんです。

 すると先生は、『ホテルに泊まると、よく“ベッドの上でたばこを吸わないでください”って書いてあるじゃない? あれよ〜』と、はぐらかすように話されて……。なぜあのような男女の情愛を思い起こさせる詞が書けたのか、いまだに謎です」

 表舞台にほとんど顔を出さず、インタビューも数少ない彼女だが、どのような人生を送っていたのか。残された資料と親しい人の証言をもとに、少女時代からその足取りを追ってみよう。

関連記事

トピックス

高校時代の安福久美子容疑者(右・共同通信)
《「子育ての苦労を分からせたかった」と供述》「夫婦2人でいるところを見たことがない」隣人男性が証言した安福容疑者の“孤育て”「不思議な家族だった」
活動再開を発表した小島瑠璃子(時事通信フォト)
《輝く金髪姿で再始動》こじるりが亡き夫のサウナ会社を破産処理へ…“新ビジネス”に向ける意気込み「子供の人生だけは輝かしいものになってほしい」
NEWSポストセブン
中国でも人気があるキムタク親子
《木村拓哉とKokiの中国版SNSがピタリと停止》緊迫の日中関係のなか2人が“無風”でいられる理由…背景に「2025年ならではの事情」
NEWSポストセブン
トランプ米大統領によるベネズエラ攻撃はいよいよ危険水域に突入している(時事通信フォト、中央・右はEPA=時事)
《米vs中ロで戦争前夜の危険水域…》トランプ大統領が地上攻撃に言及した「ベネズエラ戦争」が“世界の火薬庫”に 日本では報じられないヤバすぎる「カリブ海の緊迫」
週刊ポスト
ケンダルはこのまま車に乗っているようだ(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
《“ぴったり具合”で校則違反が決まる》オーストラリアの高校が“行き過ぎたアスレジャー”禁止で波紋「嫌なら転校すべき」「こんな服を学校に着ていくなんて」支持する声も 
NEWSポストセブン
24才のお誕生日を迎えられた愛子さま(2025年11月7日、写真/宮内庁提供)
《12月1日に24才のお誕生日》愛子さま、新たな家族「美海(みみ)」のお写真公開 今年8月に保護猫を迎えられて、これで飼い猫は「セブン」との2匹に 
女性セブン
新大関の安青錦(写真/共同通信社)
《里帰りは叶わぬまま》新大関・安青錦、母国ウクライナへの複雑な思い 3才上の兄は今なお戦禍での生活、国際電話での優勝報告に、ドイツで暮らす両親は涙 
女性セブン
東京ディズニーシーにある「ホテルミラコスタ」で刃物を持って侵入した姜春雨容疑者(34)(HP/容疑者のSNSより)
《夢の国の”刃物男”の素顔》「日本語が苦手」「寡黙で大人しい人」ホテルミラコスタで中華包丁を取り出した姜春雨容疑者の目撃証言
NEWSポストセブン
石橋貴明の近影がXに投稿されていた(写真/AFLO)
《黒髪からグレイヘアに激変》がん闘病中のほっそり石橋貴明の近影公開、後輩プロ野球選手らと食事会で「近影解禁」の背景
NEWSポストセブン
秋の園遊会で招待者と歓談される秋篠宮妃紀子さま(時事通信フォト)
《陽の光の下で輝く紀子さまの“レッドヘア”》“アラ還でもふんわりヘア”から伝わる御髪への美意識「ガーリーアイテムで親しみやすさを演出」
NEWSポストセブン
ニューヨークのイベントでパンツレスファッションで現れたリサ(時事通信フォト)
《マネはお勧めできない》“パンツレス”ファッションがSNSで物議…スタイル抜群の海外セレブらが見せるスタイルに困惑「公序良俗を考えると難しいかと」
NEWSポストセブン
中国でライブをおこなった歌手・BENI(Instagramより)
《歌手・BENI(39)の中国公演が無事に開催されたワケ》浜崎あゆみ、大槻マキ…中国側の“日本のエンタメ弾圧”相次ぐなかでなぜ「地域によって違いがある」
NEWSポストセブン