「三バン(地盤・看板・鞄)がない中でのトップ当選」(写真は1993年、衆議院で初当選を果たし喜ぶ高市氏と両親/共同通信社)

「三バン(地盤・看板・鞄)」がない中でのトップ当選(写真は1993年、衆議院で初当選を果たし喜ぶ高市氏と両親/共同通信社)

──では、テレビで流れていた「自宅」とは?

「私の選対本部長をしてくださった古屋圭司さん(元国家公安委員長)にお借りしたんですよ。同じ議員宿舎に住んでいて、ものすごいきれい好きだから、いつもカンペキ。人に見せたくてたまらないそうで(笑)、『じゃあ、オレの部屋を貸してやるよ』と言ってくださって。そこで数名で選対会議をしているシーンを映してもらいました」

──確かに、すごく整理が行き届いていました。

「陣営のほんの一部だけには、私が副反応で家で寝ているしかない状況を伝えていました。(対抗馬だった)岸田(文雄)さんは企業視察や車座集会をどんどんやっているけど、私は痛みで歩けない。メディアへの露出が少ないことを陣営が心配して、嘉門さんや世良公則さん、デーモン閣下との対談を急きょ組んでくれたんです」

安倍氏は「今は一人でいるのがいいよ」

 高市陣営を支えた「軍師」は安倍晋三・元首相だと言われた。戦いの最中、安倍氏が高市氏に、もっと露出を増やすよう忠告する一幕もあったようだ。

 安倍氏は月刊誌『文藝春秋』2月号の単独インタビューでも、高市氏について〈真面目で勉強熱心なうえ、胆力もあります。有力な総理候補として国民の皆様に認識していただいた〉と称える一方、こうも指摘していた。

〈いささか真面目過ぎて、何でも自分で引き受けてしまうところが玉に瑕。総裁選の時も、テレビに出演してアピールすべきなのに、部屋にこもって細かい政策を練っていた〉

 だが、高市氏はそれどころではなかった。

「安倍さんは、私がベッドでうめいていることはご存じなかったんです。私からは伝えませんでした。すごくご心配をされる方だから」

──政治家にとって体調はトップシークレット。とはいえ、後見人の安倍さんにも黙っていた。

「単なる副反応なので、すぐ治ると思ったから」

──『文藝春秋』は読みました?

「あの本、高いから(笑)。党本部で借りて帰ってザッと読みました。安倍さんがおっしゃっていたことは間違いで、お電話しましたよ。『褒めてくれてありがとう』って。初めて体調の話も説明しましたね。『あの時は副反応でダウンしていたので、本当にすみませんでした』って」

──4か月後の「真相告白」となったわけですね。

「でも、私のことを雑誌で取り上げてくださって、光栄なことですよ。尊敬する政治家ですから」

──安倍さんと高市さんは上下関係がある以前に、1993年衆院選の初当選同期なんですよね。その後、民主党政権時代の2012年に安倍さんが党の総裁に返り咲いた際も、高市さんは町村派(清和政策研究会)を離脱してまで安倍さんを支えて、第2次安倍政権の発足に貢献しています。

「安倍さんが2007年に病で総理を退陣された後、体調を回復された頃から、私は安倍事務所に何度も通って、『再登板に挑みましょうよ』と言いに行っていたんです。すると、2011年に、町村信孝会長(当時)から『来年の総裁選は出るから、頼むね』と声をかけられました」

──それで、町村派を離脱した。

「町村会長の出馬意向を聞いて、派閥の長の総裁選を応援しないなら、派閥にいる資格はないと考えました。町村派を出たのは、総裁選の1年前でした。直前にやめると町村会長に恥をかかせてしまうので。『財政的に厳しくなって、派閥の会費を払えなくなりました』と、テキトーな理由を(町村派の)事務局に言って」

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