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85歳の伝説のスカウトが語る PL学園時代の終焉と大阪桐蔭時代の幕開け

PL学園、青森山田、ノースアジア大明桜でスカウトを担ってきた井元氏(筆者撮影)

PL学園、青森山田、ノースアジア大明桜でスカウトを担ってきた井元氏(筆者撮影)

 広島商が部員のコロナ感染でセンバツ甲子園を辞退し、大阪桐蔭が不戦勝でベスト8となった。これにより甲子園通算58勝となった大阪桐蔭の西谷浩一監督だが、同じく通算58勝の中村順司監督の率いたPL学園を追いかけるかたちで、当初はキャリアを重ねていった。PL学園で長く選手勧誘を担い、伝説のスカウトと呼ばれた井元俊秀(いのもと・としひで、85)氏は昨夏に現場を退いたが、印象に残る選手として、PL学園のスカウトとしては声をかけず、大阪桐蔭に進んだ西岡剛(元千葉ロッテほか)を挙げた。『永遠のPL学園』(小学館文庫)の著者・柳川悠二氏(ノンフィクションライター)がレポートする。【前後編の後編、前編を読む】

 * * *
 中学時代にPLへの入学を希望しながら、井元俊秀のお眼鏡に適わず、大阪桐蔭に入学したのは西岡剛だった。井元が振り返る。

「ちょうど西岡の大阪桐蔭入学を境に、PLの時代から大阪桐蔭の時代になってゆく。郡山シニアとPLのつながりもなくなりました。西岡には申し訳ないことをしたと思っていますが、彼がプロに入ってからも、付き合いはありましたよ。球場でボクを見かけると、いろいろとイタズラしてくるような子なんです。PLに入れなかったことはよほど悔しかったろうけど、その悔しさがあったからプロ野球選手になれた。その思いが彼自身にも強いから、ボクを慕ってくれているのではないでしょうか」

 PL学園では1998年春のセンバツをもって、甲子園通算58勝の中村順司が勇退。監督が交代すると、2000年代に入って不祥事が相次ぎ、対外試合禁止などの処分が幾度も下った。そうしたPLの暗黒期に、高校野球の盟主の座を大阪桐蔭が奪っていくのである。

 西岡が大阪桐蔭の2年生だった2001年7月、夏の大阪大会の組み合わせ抽選会前日のこと。PL学園では暴力事件が発覚し、出場を辞退する。当時の監督である河野有道は辞任し、井元も翌年、65歳の定年を迎えて退職する。

 10歳からPL教団の英才教育を受け、野球を愛したPL教団の2代教祖・御木徳近の命によって野球部の強化に携わってきた井元。その後の井元は大阪に暮らしながら、青森山田の野球部の顧問となり、近畿圏の選手を東北へ橋渡しする役目を担っていく。

 青森山田は井元が在任した12年間で青森県内のいち強豪校から甲子園常連校となり、大阪の羽曳野ボーイズからスカウトした柳田将利(2005年高校生ドラフト1位で千葉ロッテ入団)は計3回、甲子園に出場した。

 しかし、2011年12月、同校の野球部の1年生部員が死亡する事件が起き、野球部は変革期を迎える。前月に井元を青森山田に誘った理事長が死去したことを受け、井元は青森を離れた。

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