数多の高校球児を指導してきた小倉氏(共同通信)

数多の高校球児を指導してきた小倉氏(共同通信)

「大船渡で正解だった」

「平成の怪物」と評された松坂と、「令和の怪物」と呼ばれる佐々木。その歩みは対照的だ。松坂は1年目に16勝、2年目に14勝、3年目に15勝と3年連続最多勝のタイトルを獲得しているのに対し、佐々木は1年目に体力づくりに専念して実戦登板なし。2年目の昨年は中10日の登板間隔で11試合登板して3勝をマークした。今季も5試合目の登板となった4月24日のオリックス戦後に、疲労蓄積を考慮されて登録抹消された。

「時代が違うから一概に比べられないよな。昔は各高校のエースと呼ばれる投手たちは1試合で130~140球なんてざらに投げていたけど、今は違う。球数制限があるし、選手の体の強さも違う。松坂は1日800球投げていた時もあったよ。『ケアをしろ』とは言ったけどね。ただ、将来を考えて無理をさせないように注意していた。(1998年夏の甲子園準決勝の)明徳義塾戦も0-6のままだったら投げさせるつもりはなかったしね。8回に4点取って逆転の可能性が出たから(救援で9回の1イニングを)投げさせた」

 佐々木は大船渡高で甲子園出場が叶わなかった。3年夏の岩手県大会決勝・花巻東戦で、國保陽平監督は故障予防の観点から佐々木を登板させず、チームも敗れた。この起用法は大きな波紋を呼び、スポーツの枠を超えて社会問題としてワイドショーに取り上げられるほどだった。小倉氏は「佐々木はあの時点でまだ何試合も連投で投げられる馬力がなかった。これはオレの推測だけど、佐々木を先発させても6~7回にスタミナが切れて、花巻東の打線につかまると國保監督は考えたんじゃないかな。負ける上に壊れるリスクがある。花巻東は強いし、佐々木が投げるイコール勝つわけじゃないんだ」と前置きした上で、こう続けた。

「ただ……甲子園常連校だったらああいう起用法はできない。いくら力のある2番手投手がいたとしても、佐々木の球を見たら指導者は使いたくなるよ。オレだって花巻東戦で(佐々木を)使っていたかもしれない。甲子園にいける位置にいるならなおさらね。國保監督は凄いよ。佐々木が私学の強豪校にいって育成法がおかしかったら、つぶれていた危険性があった。県立の大船渡に進学したのは将来を考えると正解だったんじゃないかな」

 まばゆい才能は環境、指導者に恵まれて大きな輝きを放っている。佐々木は「勝利至上主義」に縛られなかった大船渡、将来を見据えて酷使しない育成方針を貫くロッテに入団したからこそ生まれた「怪物」なのかもしれない。

平成の怪物の投球に国民が夢中になった(共同通信社)

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優勝を決めた瞬間(共同通信社)

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令和の怪物が生まれる前の優勝だった(共同通信社)

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