芸能

『持続可能な恋ですか?』上野樹里を見ながら、ドラマ視聴の持続可能性について考えた

上野樹里

上野樹里

 サブスクリプションや見逃し配信サービスも進んで、テレビドラマへのアプローチも変わってきている。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。

 * * *
 折り返し地点にさしかかった春期のドラマ。人気の方はどうでしょうか。今やドラマの評価を測るバロメーターは世帯視聴率だけでなく、動画再生回数や満足度調査などさまざまなモノサシがあります。

 最新のドラマ満足度調査(4月19日~4月25日放送対象/ORICON NewS)を見てみると、1位は山下智久主演『正直不動産』(NHK総合)というから驚き。民放でもないし目立つような派手なドラマではない。

 しかし、その満足度の評価には納得。私自身も初回からその面白さに引き込まれてしまった一人です。「山下智久『正直不動産』が奇妙な面白みを感じさせるのはなぜか」(2022.04.16「NEWSポストセブン」)に書いたように、フィクションの荒唐無稽さと不動産業のリアルさとが絶妙に組み合わさった、興味深いドラマに仕上がっています。

 だから、脱落せずに見続けることができる。裏を返せば、途中で脱落した春期ドラマも数多い。犯罪コーディネーター、元天才ボクサー、上流社会の一族……刺激的な設定が並ぶわりに内容が子どもっぽかったり薄っぺらかったり。ネット上での話題もさほど盛り上がっていない様子。

 世のSDGs(持続可能な開発目標)ではないですが、ドラマ視聴も「持続可能性」が問われる時代かもしれません。では、冒頭の『正直不動産』以外に続けて視聴しているドラマといえば?  私の場合、その一つがまさしく『持続可能な恋ですか?~父と娘の結婚行進曲~』(TBS系火曜午後10時)です。

 これがまた地味なドラマで、日常の中のささやかな出来事がメイン。ヨガインストラクターの主人公・沢田杏花(上野樹里)は、妻に先立たれた父・林太郎(松重豊)の婚活をサポート。ついでに自分も婚活パーティーへ足を運ぶ羽目に。

 杏花は自分の仕事が気に入っていて、インストラクターとして独立を目指す。結婚願望は強くなく、恋人は欲しいが世話の焼ける面倒な男は相手にしたくない。たまたま起業セミナーで出会った東村晴太(田中圭)と意気投合し、二人の距離は微妙に近いていくが……。

 杏花の性格は大雑把でおおらか、家事は雑。父とは口ゲンカが絶えないという、ある意味どこにでもありそうな平凡な日常。上野樹里さんは、そうした空気を作り出すのが実に上手な役者です。ふとした口調、ちょっとしたしぐさに生活のリアルが息づく。大きな事件や出来事は起こらないけれど、本人にとって大切な「独立」問題で判断に迷ったり、晴太との微妙な距離に心を揺らしたり。細やかな感情の推移が描かれていきます。

 杏花の心を揺さぶる東村晴太役・田中圭さんも、ハマリ役。もっと近づきたいけれどちょっと踏みとどまる、躊躇しながらも少し前に出る、そんな微妙な演技をさせたら田中さんの右に出る役者さんはいない。

関連キーワード

関連記事

トピックス

元交際相手の白井秀征容疑者(本人SNS)のストーカーに悩まされていた岡崎彩咲陽さん(親族提供)
《川崎・ストーカー殺人》「悔しくて寝られない夜が何度も…」岡崎彩咲陽さんの兄弟が被告の厳罰求める“追悼ライブ”に500人が集結、兄は「俺の自慢の妹だな!愛してる」と涙
NEWSポストセブン
グラドルから本格派女優を目指す西本ヒカル
【ニコラス・ケイジと共演も】「目標は二階堂ふみ、沢尻エリカ」グラドルから本格派女優を目指す西本ヒカルの「すべてをさらけ出す覚悟」
週刊ポスト
阪神・藤川球児監督と、ヘッドコーチに就任した和田豊・元監督(時事通信フォト)
阪神・藤川球児監督 和田豊・元監督が「18歳年上のヘッドコーチ」就任の思惑と不安 几帳面さ、忠実さに評価の声も「何かあった時に責任を取る身代わりでは」の指摘も
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン
赤穂市民病院が公式に「医療過誤」だと認めている手術は一件のみ(写真/イメージマート)
「階段に突き落とされた」「試験の邪魔をされた」 漫画『脳外科医 竹田くん』のモデルになった赤穂市民病院医療過誤騒動に関係した執刀医と上司の医師の間で繰り広げられた“泥沼告訴合戦”
NEWSポストセブン
被害を受けたジュフリー氏、エプスタイン元被告(時事通信フォト、司法省(DOJ)より)
《女性の体に「ロリータ」の書き込み…》10代少女ら被害に…アメリカ史上最も“闇深い”人身売買事件、新たな写真が公開「手首に何かを巻きつける」「不気味に笑う男」【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
2025年はMLBのワールドシリーズで優勝。WBCでも優勝して、真の“世界一”を目指す(写真/AFLO)
《WBCで大谷翔平の二刀流の可能性は?》元祖WBC戦士・宮本慎也氏が展望「球数を制限しつつマウンドに立ってくれる」、連覇の可能性は50%
女性セブン
「名球会ONK座談会」の印象的なやりとりを振り返る
〈2025年追悼・長嶋茂雄さん 〉「ONK(王・長嶋・金田)座談会」を再録 日本中を明るく照らした“ミスターの言葉”、監督就任中も本音を隠さなかった「野球への熱い想い」
週刊ポスト
12月3日期間限定のスケートパークでオープニングセレモニーに登場した本田望結
《むっちりサンタ姿で登場》10キロ減量を報告した本田望結、ピッタリ衣装を着用した後にクリスマスディナーを“絶景レストラン”で堪能
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
笹生優花、原英莉花らを育てたジャンボ尾崎さんが語っていた“成長の鉄則” 「最終目的が大きいほどいいわけでもない」
NEWSポストセブン
日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《本誌スクープで年内活動辞退》「未成年アイドルを深夜自宅呼び出し」SKY-HIは「猛省しております」と回答していた【各テレビ局も検証を求める声】
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん
亡くなったジャンボ尾崎さんが生前語っていた“人生最後に見たい景色” 「オレのことはもういいんだよ…」
NEWSポストセブン