ライフ

【江戸文人の変人伝説1】俳人・松尾芭蕉は「請負ビジネスの先駆け」

全国各地にある芭蕉像はどれも控えめな雰囲気を漂わせるが…(山形県酒田市の日和山公園)

全国各地にある芭蕉像はどれも控えめな佇まいだが…(山形県酒田市の日和山公園)

「夏草や 兵どもが 夢の跡」――大河ドラマ『鎌倉殿の13人』でも描かれた源義経や奥州藤原氏の滅亡を偲んで詠んだ松尾芭蕉の有名な一句だが、これら数多くの名句を残した俳人には、意外な一面があった。『文人たちの江戸名所』(世界書院)の著者で、江戸文化歴史検定協会の元理事・竹内明彦氏が、江戸文人の「奇抜エピソード」を紹介する。

 * * *
 紀行『おくのほそ道』などで松尾芭蕉が巡った地域には数多くの芭蕉像があるが、ほとんどが宗匠頭巾を被り、手に杖と傘を持ち、「わび、さび」を想起させる質素な雰囲気を漂わせる。それゆえ、世俗的な欲望や功名心とは縁遠い文化人という印象を抱く人が大半だろう。そんな芭蕉が、実は当時の“江戸バブル”を駆け抜けた「新進気鋭のビジネスマン」だったことはあまり知られていない。

 江戸時代研究の必携本とされる風俗事典『嬉遊笑覧(きゆうしょうらん)』を著わした喜多村信節(きたむらのぶよ)という文人がいる。この喜多村家は代々の町年寄(町奉行の配下として名主たちを統括した役人)だったこともあり、信節は町政の記録も残していた。その中に残された延宝八年(1680年)六月十一日に出された「町触(名主たちへのお触れ)」を引用する。

《明後日十三日、神田川上水道水上総払いこれあり候間、相対致し候町々は、桃青方へきっと申し渡さるべく候》

「水上総払い」とは、上水に溜まった土砂の浚渫工事のこと。当時の水路は蓋のない開渠だったので土や埃などが溜まりやすく、年に一度の大規模な浚渫が必要だった。言うまでもなく当時の神田川は江戸に住む者の重要な水源である。そして「相対」とは相対契約の意味。この町触は「明後日に水道掃除があるので、契約したい名主は、必ず桃青に連絡せよ」と指示しているわけだ。

関連記事

トピックス

驚異の粘り腰を見せている石破茂・首相(時事通信フォト)
石破茂・首相、支持率回復を奇貨に土壇場で驚異の粘り腰 「森山裕幹事長を代理に降格、後任に小泉進次郎氏抜擢」の秘策で反石破派を押さえ込みに
週刊ポスト
別居が報じられた長渕剛と志穂美悦子
《長渕剛が妻・志穂美悦子と別居報道》清水美砂、国生さゆり、冨永愛…親密報道された女性3人の“共通点”「長渕と離れた後、それぞれの分野で成功を収めている」
NEWSポストセブン
結婚を発表した趣里と母親の伊藤蘭
《母が趣里のお腹に優しい眼差しを向けて》元キャンディーズ・伊藤蘭の“変わらぬ母の愛” 母のコンサートでは「不仲とか書かれてますけど、ウソです!(笑)」と宣言
NEWSポストセブン
2020年、阪神の新人入団発表会
阪神の快進撃支える「2020年の神ドラフト」のメンバーたち コロナ禍で情報が少ないなかでの指名戦略が奏功 矢野燿大監督のもとで獲得した選手が主力に固まる
NEWSポストセブン
ブログ上の内容がたびたび炎上する黒沢が真意を語った
「月に50万円は簡単」発言で大炎上の黒沢年雄(81)、批判意見に大反論「時代のせいにしてる人は、何をやってもダメ!」「若いうちはパワーがあるんだから」当時の「ヤバすぎる働き方」
NEWSポストセブン
寄り添って歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《お出かけスリーショット》小室眞子さんが赤ちゃんを抱えて“ママの顔”「五感を刺激するモンテッソーリ式ベビーグッズ」に育児の覚悟、夫婦で「成年式」を辞退
NEWSポストセブン
負担の多い二刀流を支える真美子さん
《水着の真美子さんと自宅プールで》大谷翔平を支える「家族の徹底サポート」、妻が愛娘のベビーカーを押して観戦…インタビューで語っていた「幸せを感じる瞬間」
NEWSポストセブン
“トリプルボギー不倫”が報じられた栗永遼キャディーの妻・浅井咲希(時事通信フォト)
《トリプルボギー不倫》女子プロ2人が被害妻から“敵前逃亡”、唯一出場した川崎春花が「逃げられなかったワケ」
週刊ポスト
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“1000人以上の男性と寝た”金髪美女インフルエンサー(26)が若い女性たちの憧れの的に…「私も同じことがしたい」チャレンジ企画の模倣に女性起業家が警鐘
NEWSポストセブン
24時間テレビで共演する浜辺美波と永瀬廉(公式サイトより)
《お泊り報道で話題》24時間テレビで共演永瀬廉との“距離感”に注目集まる…浜辺美波が放送前日に投稿していた“配慮の一文”
NEWSポストセブン
芸歴43年で“サスペンスドラマの帝王”の異名を持つ船越英一郎
《ベビーカーを押す妻の姿を半歩後ろから見つめて…》第一子誕生の船越英一郎(65)、心をほぐした再婚相手(42)の“自由人なスタンス”「他人に対して要求することがない」
NEWSポストセブン
会話をしながら歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《眞子さんが見せた“ママの顔”》お出かけスリーショットで夫・小室圭さんが着用したTシャツに込められた「我が子への想い」
NEWSポストセブン