監督自身、妻と話し合って書かれた“デスノートコメント”
―― “サイト上でディスられる夫”という設定はどのようにできあがったのだろう。
「夫婦を描きたい、結婚とか離婚を描きたいとなったとき、『だんなDEATH NOTE』というサイトの存在を知りました。
誰かが見ることを意識して書かれているから、辛辣だけれど、どこかユーモアを入れている文章も多くて、シリアスな夫婦とはギャップがある。本当に険悪な夫婦は意外に書いていないんじゃないかと、僕は思ったんですね。だから、いざシリアスになったらどうなっていくかなと思ったんです。
オリジナル脚本なので、パーソナルな部分も入れています。例えば、自分の妻とのことを振り返ると、僕と向き合っているときより友人とか大人数といるときのほうが、僕への文句を言う。まるで誰かに同意を求めるように、公開処刑のように言うときがあるんです。
『面と向かって言えばいいのに』って、あとでケンカになったりするんですが、誰かに同調を求めるっていうのは、『デスノート』に似ているなと思ったんです。そんな自分が感じた感情とかも含めて、振り返りながら脚本を書いていきました」
―― 物語中の『旦那デスノート』に書き込まれているコメントは、既婚者(妻)から見てもリアリティがある。どこでリサーチしたのだろう?
「離婚した女友達とか、わりと身近なところです。もちろん自分でも考えましたが、文言に関しては、うちの妻ともけっこうやりとりしながら修正していきました。結婚に全く興味のない登場人物も含め、身近なところからリサーチして人物像を作った感じですが、どこか自分の意識が少なからず入っていると思います。そういう自分のなかから出てきた考えを、それぞれのキャラクターに振り分けた感じはあると思います」
―― 市井監督自身、妻で女優の市井早苗さんとのユニット「市井点線」名義で、この映画の小説版も執筆し発売されている。
「妻とも話したのは、夫婦ってよくわからないから、わからないっていうことをそのまま描こうと。映画は、慎吾さんや岸井さんの表情とか、情報がいっぱいあるがゆえの複雑さみたいなところがそのまま生々しく出たと思います。
そこをなんとか必死に言葉にしたのが小説版です。映画には入っていない裕次郎と日和の過去の部分、映画よりもうちょっと先のお話も書いています。ぜひ、じっくり読んでほしいですね」