田中会長も被害者のひとり
紀藤:政治家のセキュリティ意識の低さは問題です。10人以上の大臣経験者が統一教会に食い込まれるのは日本の政治にとって脅威でしかない。政治家とはどうあるべきかを教える人が、政治家のなかに少なくなったのではないか。
鈴木:自民党の調査でも47%が統一教会と関係した。それも表向きの調査だから実際はもっと多いはずです。統一教会側から見れば、イベント代や車代など合わせて相当なお金を政治家に「投資」している。
塚田:安倍氏が亡くなるまでそれが当たり前だったんだから、本当に驚きですよ。
鈴木:国葬は一つの区切りになるでしょうが、教会の稚拙な会見や自民党の対応のまずさもあり、色々なトピックがどんどん出ている。まだまだネタが豊富で、すぐには鎮静化しないでしょう。他方で長期的には下火になっていくでしょうが、2世や信者の人権問題にメディアが関心を持ち続けることが求められます。
紀藤:僕の最終的な目標は、現役信者を含めて統一教会の被害を解決することです。極論ですが、僕は韓鶴子(総裁)と側近以外の教会関係者は被害者だと思います。日本教会の田中富広会長の周りにも悲しんでいる親族がたくさんいるはずで、田中会長ですら救わないといけません。
先頭に立つ人ですら、被害者的側面もある。エイトさんにも、テレビでもっと被害者救済を訴えてほしい。
鈴木:もちろん僕自身、これからも被害者救済の流れを作っていきたい。僕は塚田さんが、学者という難しい立場で問題解決のために取り組み続けていることを知っているので、塚田さんにももっともっと出てきてほしいですね。
塚田:がんばります。いろんな立場の人間がそれぞれ事実を積み上げ、ワンチームで問題解決につなげられればと思います。
(了。前編から読む)
【プロフィール】
紀藤正樹(きとう・まさき)/1960年生まれ、山口県出身。弁護士。1990年に第二東京弁護士会に登録。「霊感商法」被害に取り組む全国霊感商法対策弁護士連絡会に所属し、2001年にリンク総合法律事務所を開設した。著書に『マインド・コントール』(アスコム)等。
鈴木エイト(すずき・えいと)/滋賀県出身、日本大学卒業。ジャーナリスト。ニュースサイト「やや日刊カルト新聞」で副代表、主筆を歴任。カルト宗教問題を扱う日本脱カルト教会に所属し、統一教会問題を中心に反ワクチン等の問題にも取り組む。9月26日に『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』(小社刊)を刊行。
塚田穂高(つかだ・ほたか)/1980年生まれ、長野県出身。宗教社会学者。東京大学大学院人文社会系研究科で博士課程修了。上越教育大学大学院学校教育研究科准教授。新宗教運動・政教問題・カルト問題などに取り組む。編著書に『徹底検証 日本の右傾化』(筑摩選書)等。
※週刊ポスト2022年10月7・14日号