弱々しい電話口の声
陽子ちゃんとは仕事上で会っている感じがせず、女優さんと会っている感じではなかった。だからつい気を許して、僕もあなたも素の自分に戻っていたような感じがします。
たまに、思いがけず電話をくれて驚かせてくれたこともありましたね。「元気?」といった、さりげない普通の会話でしたが、いつも懐かしさを込めてお話ししました。ほっこりした優しい声で、何も変わりのないような話し方で。
最後に話したのも電話で、「またどこかで食事でもして話がしたいね」なんて言い合ったね。でも、その時の電話口の声は、どこか弱々しい感じがしたので、ちょっと気にはなってたんだ。
陽子ちゃん。あなたは本当に優しい子でしたね。話し方も囁くように穏やかでした。しかし、優しすぎるがゆえに、いろいろとご苦労もされたのではないかという気もしています。優しさゆえの気苦労も多かったのではないでしょうか。
しかし、見事に成長されて素晴らしい魅力的な女性になって、また段々と雰囲気も眩しくなるような部分もありました。まだ今後も楽しみな女優さんだったと思います。
僕自身もとても悔しい。もっとあなたの夢を叶えさせてあげたかった。日本が誇るべき国際派女優としてもっと活躍してほしかったよ。
だから、素晴らしい足跡を残し、感動や夢を与えてくれたあなたを忘れることはできない。優しいあの微笑みも、絶対に忘れることはできません。どうか天国でゆっくり休んでください。本当にありがとう。
※週刊ポスト2022年12月23日号