「Qアノンは陰謀論ではない」
本誌・週刊ポストは文面の一部が流出したものを入手した。A氏は「ディープステート」(DS=闇の政府)が米国を裏で支配し、トランプ前大統領が落選した米大統領選挙の不正やロシアのウクライナ侵攻の裏で暗躍しているという主張を綴っている。
「Qアノン【*】の主張は陰謀論ではない」
【*/「アメリカは世界を裏で支配する闇の勢力・ディープステート(DS)に操られている」「DSは小児性愛や人肉食を行なう悪魔崇拝者の集まりで、トランプ前大統領がDSと戦う救世主」などと主張している集団】
「トランプの選挙不正は事実。なぜ陰謀論と言われるのか。それは闇の政府のDSが裏で関係しているから」
「トランプはDSの闇を暴こうとしているが、DSによって真実が報道されることはありません」
「DSの存在が否定されるほうが彼らにとって都合がいい」
概略、こうした文章が並んでいる。前出・公調関係者は次のように言う。
「A氏は『公安にはDSの存在に気づいていない職員が多い。リベラル化してしまっている』と公調の現状を憂いている」
どうやら、同僚や部下の職員たちに“闇の政府”の存在を知らしめることが送信の目的らしい。
A氏が個人的にどんな思想や信条を持とうと自由だが、公安調査庁という政府機関の一員が、組織内に「陰謀論」を“伝道”しようとしているとすれば話は違ってくる。インテリジェンス研究が専門の小谷賢・日本大学危機管理学部教授が指摘する。
「公安調査庁にそんな職員がいるとは耳を疑う内容です。それが世に伝われば、少なくとも世界のインテリジェンス界は、公調の情報分析力に疑問を感じることでしょう。DSやQアノンを信じているということは、分析能力に欠けているということです。それをその職員は、個人の心の中にしまっておかず、同僚に示している。
陰謀論であっても、情報を扱う公調の調査官がそうした情報を外部に伝えれば、情報漏洩になります。ただ、この職員が内部関係者だけに伝えているのだとすれば、意外に冷静で、まだ自制的とも言えます。陰謀論を信じた職員がいた場合の対応は、公務員だから解雇はできないが、重要なポストには置けないでしょう。たとえば、“情報を扱わないポジション”などの閑職に異動させるというのが組織としての対応ではないでしょうか」