また、『大病院占拠』の鬼は、「正体を知られたくないはずのテロリストが、わざわざ見分けがつきやすい色違いの仮面をかぶっていた」ところに、子どもへのわかりやすさと怖さの軽減を狙った様子がうかがえました。構成・演出を見ても、「テロリストとの攻防にハラハラドキドキする」というより、「〇色の鬼は誰が正体なのかを当てて楽しむ」ような軽さを優先させていましたが、これもファミリー視聴を踏まえたものではないでしょうか。
『THE鬼タイジ』は、「鬼ごっこ」のようなコンセプト自体が子どもに向けたものですが、さまざまな色の鬼や、怪力の力士鬼、高速タックルのラグビー鬼などを用意しているのは、ファミリー視聴を踏まえてエンタメ性を高めるための策でしょう。
「人間が怒りで鬼に変わる」という設定
『鬼滅の刃』の影響は、前述した各番組の背景からもうかがえます。
まず『妖怪ランキング大百科 鬼強い!鬼とヤバいもののけたちが大集合!』は、昨年2月13日19時から3時間特番として第1弾が放送されました。その特番終了から1時間あまりが過ぎた23時15分から『鬼滅の刃 遊郭編』の最終話が放送されたのです。
つまり、良く言えば『鬼滅の刃』をより楽しんでもらうために、悪く言えば『鬼滅の刃』の人気に乗っかるために企画された特番なのでしょう。さらにそれは新シリーズの『鬼滅の刃 刀鍛冶の里編』を目前に控えた2日放送の第2弾にも該当します。
次に『THE鬼タイジ』と『大病院占拠』は、「人間が怒りなどで鬼に変わってしまった」という設定が『鬼滅の刃』と似ています。『THE鬼タイジ』は出演者に撃たれた鬼が人間の姿に戻るところまでしっかり映していますし、『大病院占拠』の鬼も復讐を果たす上で仮面を脱いで人間に戻るような描写がありました。
もともと鬼や妖怪は子どもが好むものでしたが、『鬼滅の刃』の人気が長く続いていることで、より身近なモチーフになっているのは間違いないでしょう。4月9日の『鬼滅の刃 刀鍛冶の里編』スタート以降も、この傾向はフジテレビを中心に続いていくのではないでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。