衆院選の予想獲得議席数

衆院選の予想獲得議席数

事実上の“政権乗っ取り”

 維新にとっても、自民党と大連立を組むメリットは小さくない。野上氏が語る。

「維新が自民党と大連立を組めば、たとえば馬場伸幸・代表が副総理、藤田文武・幹事長が総務大臣など何人かの閣僚を送り込めるし、創設者の橋下徹氏もすでに引退してはいますが、本人が望めば内閣参与や内閣顧問などに就任して政権に影響力を行使できるでしょう。

 しかし、メリットはそれだけではない。維新には政治経験が浅い若い議員が圧倒的に多い。野党経験しかないままでは、3年後や4年後に政権を取ったとしても彼らが大臣や副大臣を務めるのは難しいでしょう。その点、自民党には若手議員に政調の各部会長や省庁の政務官、副大臣などを経験させ、行政経験を積ませる仕組みがある。維新にとって連立参加の最大のメリットは、若手議員を政務官などに就けて政権を動かす経験を積ませることができることです」

 もともと維新は3段階の政権戦略を立てていた。前回の総選挙で41議席に伸ばした後、馬場代表(当時は幹事長)がこう語っている。

「今回の衆院選の結果は、三段跳びでいえば、『ホップ』。次の衆院選では100議席獲得を目標に『ステップ』を踏み、最後は『ジャンプ』作戦で政権を狙いたい」

 政権は取ることより、維持することが難しい。

 それは民主党政権(2009年)が衆参で過半数を占める完全政権交代を成し遂げながら、行政手腕の未熟さと政策の迷走、党内の内紛でたちまち国民の信を失い、わずか3年で崩壊したことが物語っている。政権を担った経験がない政党が、国政を担うのはそれほど難しい。

 自民との大連立は維新の議員が「国政」を経験する機会になるのだ。

 実は、かつての民主党にもそのチャンスがあった。政権交代2年前の福田内閣時代(2007年)、福田康夫・首相は野党第一党だった民主党の小沢一郎・代表(当時)に党首会談で大連立を持ちかけた。

 民主党内の「大連立は自民党を延命させる」という猛反対で実現しなかったが、小沢氏は後に狙いをこう振り返っている。

「与党としての経験を積むというのと同時に、もう一つは、福田さんは、ポストも何でもやると、ほぼ言いなりだったから、それによって権力の半分を握れるわけです。そうすると、選挙にも絶対有利だと。だから、庇を借りて母屋を取ってしまおうと」(本誌2019年5月17・24日号インタビュー)

 民主党はチャンスを棒に振ったが、総選挙後に自民党が維新に大連立を持ちかければ、今度は維新が、総理を誰にするか、大臣ポストも思うまま。事実上、維新による“政権乗っ取り”という状況が生まれる可能性さえある。

※週刊ポスト2023年5月19日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

元交際相手の白井秀征容疑者(本人SNS)のストーカーに悩まされていた岡崎彩咲陽さん(親族提供)
《川崎・ストーカー殺人》「悔しくて寝られない夜が何度も…」岡崎彩咲陽さんの兄弟が被告の厳罰求める“追悼ライブ”に500人が集結、兄は「俺の自慢の妹だな!愛してる」と涙
NEWSポストセブン
グラドルから本格派女優を目指す西本ヒカル
【ニコラス・ケイジと共演も】「目標は二階堂ふみ、沢尻エリカ」グラドルから本格派女優を目指す西本ヒカルの「すべてをさらけ出す覚悟」
週刊ポスト
阪神・藤川球児監督と、ヘッドコーチに就任した和田豊・元監督(時事通信フォト)
阪神・藤川球児監督 和田豊・元監督が「18歳年上のヘッドコーチ」就任の思惑と不安 几帳面さ、忠実さに評価の声も「何かあった時に責任を取る身代わりでは」の指摘も
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン
赤穂市民病院が公式に「医療過誤」だと認めている手術は一件のみ(写真/イメージマート)
「階段に突き落とされた」「試験の邪魔をされた」 漫画『脳外科医 竹田くん』のモデルになった赤穂市民病院医療過誤騒動に関係した執刀医と上司の医師の間で繰り広げられた“泥沼告訴合戦”
NEWSポストセブン
被害を受けたジュフリー氏、エプスタイン元被告(時事通信フォト、司法省(DOJ)より)
《女性の体に「ロリータ」の書き込み…》10代少女ら被害に…アメリカ史上最も“闇深い”人身売買事件、新たな写真が公開「手首に何かを巻きつける」「不気味に笑う男」【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
2025年はMLBのワールドシリーズで優勝。WBCでも優勝して、真の“世界一”を目指す(写真/AFLO)
《WBCで大谷翔平の二刀流の可能性は?》元祖WBC戦士・宮本慎也氏が展望「球数を制限しつつマウンドに立ってくれる」、連覇の可能性は50%
女性セブン
「名球会ONK座談会」の印象的なやりとりを振り返る
〈2025年追悼・長嶋茂雄さん 〉「ONK(王・長嶋・金田)座談会」を再録 日本中を明るく照らした“ミスターの言葉”、監督就任中も本音を隠さなかった「野球への熱い想い」
週刊ポスト
12月3日期間限定のスケートパークでオープニングセレモニーに登場した本田望結
《むっちりサンタ姿で登場》10キロ減量を報告した本田望結、ピッタリ衣装を着用した後にクリスマスディナーを“絶景レストラン”で堪能
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
笹生優花、原英莉花らを育てたジャンボ尾崎さんが語っていた“成長の鉄則” 「最終目的が大きいほどいいわけでもない」
NEWSポストセブン
日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《本誌スクープで年内活動辞退》「未成年アイドルを深夜自宅呼び出し」SKY-HIは「猛省しております」と回答していた【各テレビ局も検証を求める声】
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん
亡くなったジャンボ尾崎さんが生前語っていた“人生最後に見たい景色” 「オレのことはもういいんだよ…」
NEWSポストセブン