“ほろ苦デビュー”だった大の里

“ほろ苦デビュー”だった大の里

 かつて日大相撲部で学生横綱になった下田圭将(追手風部屋)が幕下15枚目格付出でのデビュー場所で7勝全勝優勝するも、1場所では十両に上がれず、その後も幕下力士のままケガをして引退したという例もある。大の里もアマの実績が十分とはいえ、力士のキャリアが順調に進むかはわからないところもあるのだ。そうしたなか、大の里の師匠である元横綱・稀勢の里(現・二所ノ関親方)への厳しい声も聞こえてくる。相撲ジャーナリストが言う。

「大の里が初日を取りこぼしたことをほくそ笑んで見ている親方もいる。叩き上げを奨励してきた隆の里さん(元横綱、元・鳴戸親方)の弟子である稀勢の里の部屋が日体大だらけになっているのを意外に思う角界関係者は多く、“これじゃスカウトにばかり目を向ける白鵬と変わらないじゃないか”という批判の声もあります。

 もちろん、日体大OBである部屋付きの中村親方(元関脇・嘉風)の存在があって日体大出身者が増えている面はあるが、大の里については中村親方が今後、独立して部屋を興してからも、稀勢の里のところに残るという。叩き上げを育ててくれるという期待やイメージが強かっただけに、“稀勢の里も終ったな”と嘆く親方もいるほど。借金で部屋を新築して結果を残したいという考えも無関係ではないだろうが、隆の里さんが生きていたらなんて言っただろうね」

 超大物新人のスカウトに成功して順風満帆に見えたが、大の里がつまずけば、風向きは大きく変わるかもしれないのだ。いきなりプロの洗礼を受け、2番相撲で勝った大の里は「負けた分、楽になった。前評判で騒がれていたが“ただの人”になった。プレッシャーを感じていたので“普通の幕下力士”になったと思い、土俵に上がった」と大物らしいコメント。

 果たしてどんなかたちで場所を終えることになるのか。

※週刊ポスト2023年6月2日号

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