廃校敷地内に駐車する「パナウェーブ研究所」のメンバー(時事通信フォト)

廃校敷地内には、渦巻き模様のステッカーがベタベタと貼られた白いワゴン車の車列が……(時事通信フォト)

 彼らが白い装束に身を包み、渦巻き模様のステッカーを貼った白いワゴン車に乗って移動していたのは、彼らの主張によると「過激派の共産主義者からの電磁波攻撃から逃れるため」だった。しかし、一般的には意味不明だ。千乃正法とはどのようなものだったのか。

「“千乃が説く正しい法”という意味で、1969年にGLAという宗教団体を創始した高橋信次の著作に心酔した千乃が、1977年に学習団体として千乃正法会を設立しました。同年12月に彼女が『天国の扉』を著したのがきっかけで広まりました。

 私の推算ですが、全盛期だった1980年代は、全国に3000人の会員を集めたに過ぎず、法的には任意団体。千乃は生き物へ愛情を注ぐ一方、共産主義を嫌悪していました」

 千乃氏は“共産主義過激派からの電磁波攻撃”のために「いつ死ぬかわからない状態」だと主張していた。しかし、騒動の渦中にテレビインタビューに応えた千乃氏は、不気味な白装束集団を率いていた“教祖”のイメージとは異なり、多弁で元気そうに見え、視聴者は拍子抜けしたのだった。

「それを機にメディアの取材攻勢は収まりを見せ始め、世間の関心も薄れていきました。でも、周囲の不安や警戒心は収まらず、キャラバン隊の受け入れや車列の通過を拒否する自治体が増えていき、見過ごせなくなった警察庁や警視庁公安部が捜査。その結果、千乃正法会は他に危害を加える危険性はみられず、強引な会費集めの形跡はない、と。

 キャラバン隊は最終的には、1993年に電磁波被害を調査・研究する公益目的の施設として、会員の寄付によって建設された福井市五太子町のパナウェーブ研究所本部に落ち着きました」

 こうしてキャラバンは騒動後、まもなく終わった。献身的な会員らは、その後も千乃氏を電磁波攻撃から守るために教祖に尽くした。しかし、千乃氏はそんな彼らを厳しく叱りつけ、「追放だ!」と罵ることもあった。

 同年8月には施設内で大学の研究者が変死し、パナウェーブ研究所の関係者5人が逮捕。結局、略式起訴に終わり、傷害罪より軽い暴行罪で各人20万円の罰金に終わったのだが、翌9月にもボランティアの事故死が起きた。パナウェーブ研究所の空気は沈んでいった。「千乃先生はおかしい」と気付いた会員らは「もう付いていけない」とどんどん離れていき、最後パナウェーブ研究所に詰める会員の数は20人ほどになっていたという。

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