ビジネス

高齢化がすすむ団地住民の「足」問題 ラストワンマイルを補う自動運転モビリティの試み

マンモス団地の代表格、全126棟2710戸の左近山団地(横浜市旭区、1968年~)も多摩丘陵開発のひとつ。地域コミュニティが今も活発だが、5階建てエレベーターなし物件が多いため住民の高齢化とともに問題となっている(時事通信フォト)

マンモス団地の代表格、全126棟2710戸の左近山団地(横浜市旭区、1968年~)も多摩丘陵開発のひとつ。地域コミュニティが今も活発だが、5階建エレベーターなし物件が多いため住民の高齢化とともに問題となっている(時事通信フォト)

 1980年代までにつくられた建造物は、日本全体が若者の国だった時代の基準で作られてきたため、高齢化率(65歳以上人口の割合)が28.4%の現在では、段差や階段、アクセスなど人々がその街で生活しづらくなってきた。それに伴い、生活者に対して交通サービスが到達する最後のあと少し、いわゆる「ラストワンマイル」が年々、困難さを増している。ライターの小川裕夫氏が、高齢化率が上昇したニュータウンでの、乗り合いサービスや自動運転モビリティの試みについてレポートする。

 * * *
 5月12日、厚生労働省が2020(令和2年)度の調査に基づいて、全国の市区町村別の平均寿命を発表した。5年に1度実施されるこの調査は2000年から始まり、5回目の今回、川崎市の麻生区が男性84歳、女性89.2歳で男女ともに初めて全国トップになった。

 長寿であることは慶賀すべき話だが、他方で長寿であるがゆえの問題も発生している。それが、地域住民の足の確保だ。

高齢化に対応した乗合サービス

 高度経済成長期、東京は人口が急増。東急総帥の五島慶太は田園都市づくりを夢見て、東急沿線の多摩丘陵を切り拓いて住宅地を開発。このときに造成された住宅地は多摩田園都市と名づけられた。

 また、東急だけではなく日本住宅公団(現・都市再生機構)も川崎市麻生区や隣接する横浜市青葉区で大規模な開発・分譲をしている。日本住宅公団は、多摩丘陵を切り拓いた一帯に43棟、総戸数1578戸もある虹ヶ丘団地など多くの団地を建設。現在も川崎市麻生区・横浜市青葉区には団地群が点在しているが、1980年代頃までに建設された団地の5階建て物件には、少しずつ設置工事がすすめられてはいるがエレベーター無しの住棟がまだ多い。高齢の入居者は外出にも困難を要する。

 こうした事態が深刻化してきた昨今、行政や住民は動き始めている。麻生区片平地域の住民がコミュニティ交通推進協議会を立ち上げ、2022年10月から乗合型のコミュニティ交通サービスの実証実験を開始したのだ。

「同実験は、地元の横浜国立大学や神奈川トヨタ自動車などの協力も得て、ワンボックスタイプの乗用車で実施しました。サービス開始当初は1日の平均利用者は20名程度でしたが、住民に周知されるにつれて利用者が増えていき、終了間際には40人前後まで利用者が増えました」と話すのは、川崎市まちづくり局交通政策室の担当者だ。

関連記事

トピックス

オーナーが出入りしていた店に貼られていた紙
「高級外車に乗り込んで…」岐阜・池田温泉旅館から“夜逃げ”したオーナーが直撃取材に見せた「怒りの表情」 委託していた町の職員も「現在もまだ旅館に入れない」と嘆き
NEWSポストセブン
記者の顔以外の一面を明かしてくれた川中さん
「夢はジャーナリストか政治家」政治スクープをすっぱ抜いた中学生記者・川中だいじさん(14)が出馬した生徒会長選挙で戦った「ものすごいライバル候補」と「人心を掴んだパフォーマンス」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博内の『景福宮』での重大な疑惑が発覚した(時事通信)
《万博店舗スタッフが告発》人気韓国料理店で“すっぱい匂いのチャプチェ”提供か…料理長が書いた「始末書」が存在、運営会社は「食品衛生上の問題はなかった」「異常な臭いはなかった」と反論
NEWSポストセブン
63歳で初めて人生を振り返った俳優・小沢仁志さん
《63歳で初めて人生を振り返った俳優・小沢仁志》不良役演じた『ビー・バップ』『スクール☆ウォーズ』で激変した人生「自分の限界を超える快感を得ちまった」
NEWSポストセブン
釜本邦茂さん
サッカー界のレジェンド・釜本邦茂さんが「免許返納」密着取材で語っていた「家族に喜んでもらえることの嬉しさ」「周りの助けの大きさ」
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがニューシングル『Letter』をリリース(写真・左/AFLO、写真・右/Xより)
羽生結弦の元妻のバイオリニスト・末延麻裕子さん、“因縁の8月”にニューシングル発売 羽生にとっては“消せない影”となるのか 
女性セブン
中学生記者・川中だいじさん(14)が明かした”特ダネ”の舞台裏とは──
「期末テストそっちのけ」中学生記者・川中だいじさん(14)が抜いた特ダネスクープの“思わぬ端緒”「斎藤知事ボランティアに“選挙慣れ”した女性が…」《突撃著書サイン時間稼ぎ作戦で玉木氏を直撃取材》
NEWSポストセブン
釜本邦茂さん
メキシコ五輪得点王・釜本邦茂さんが語っていた“点取り虫”になる原点 “勝負に勝たなければならない”の信念は「三国志」に学んでいたと語る
NEWSポストセブン
北海道札幌市にある建設会社「花井組」SNSでは社長が従業員に暴力を振るう動画が拡散されている(HPより、現在は削除済み)
《暴行動画に批判殺到の花井組》社長らが書類送検で会社の今後は…元従業員は「解体に向けて準備中」、会長は「解体とは決まっていない。結果が出てくれば、いずれわかる」と回答
NEWSポストセブン
雅子さまのご静養に同行する愛子さま(2025年8月、静岡県下田市。撮影/JMPA) 
愛子さま、雅子さまのご静養にすべて同行する“熱情” そばに寄り添う“幼なじみ”は大手造船会社のご子息、両陛下からも全幅の信頼 
女性セブン
猫愛に溢れるマルタでは、動物保護団体や市民による抗議活動が続いているという(左・時事通信フォト)
《深夜に猫地面にたたきつける動画》マルタで“猫殺し”容疑で逮捕の慶應卒エリート・オカムラサトシ容疑者の凶行と、マルタ国民の怒号「恥を知れ」「国外に追放せよ」
NEWSポストセブン
大神いずみアナ(右)と馬場典子アナが“長嶋茂雄さんの思い出”を語り合う
大神いずみアナ&馬場典子アナが語る“長嶋茂雄さんの思い出”「こちらが答えて欲しそうなことを察して話してくれる」超一流の受け答え
週刊ポスト