ワクチンは薬。必ず副作用がある
追加接種の効果低減や、リスクへの不安もある中で、すでに6回目のワクチン接種を済ませたと話すのは、神奈川県在住の会社員・Uさん(75才)だ。
「年が年だからね。打たないよりは打つ方が安心だと思って、案内が届いてすぐに申し込みました。打ってから3日間くらい腕が痛かったけど、副反応はその程度。同じ会社で私と年齢が近い人は、みんな6回目を打っています」
実際に内田さんのような人は少なくなく、6月上旬に都内の内科を受診した会社員・Sさん(43才)はこんな光景を目にした。
「70才、80才という私の両親くらいの人たちが待合室に大勢いたので何かと思ったら、ワクチン接種でした。私は3回目まででやめたので、まだこんなに律義に接種する人がいるのかと驚きです」
前出の村上さんによれば、ワクチンに見込まれるのは「感染の予防効果」だけではないという。
「ワクチンには感染予防効果、発症予防効果、そして重症化予防効果があります。なかでもいま注目されているのは、重症化予防効果。オミクロン株になってから、ワクチンの感染予防と発症予防の効果は減りましたが、重症化リスクを抑える効果は60〜70%ぐらい維持されていると考えられる。しかも接種から半年ほどは効果が続くこともわかっています」(村上さん・以下同)
政府が追加接種をすすめる背景には、重症化を防ぎ医療費増大を抑えたい狙いもある。
「コロナはいったん重症化すると命にかかわりますし、治療には医療費がものすごくかかる。例えばECMO(体外式膜型人工肺)はいったんつけると2か月くらい外すことができない人もいて、その場合1人当たり約400万円もかかる。国としてはそれを防ぎたいという事情もあるのです」
しかし、前述の通り、ワクチンには副反応への不安も伴う。ワクチン接種後に死亡した人は国内で2000人を超えるとされ、うち厚労省が「因果関係が否定できない」として死亡一時金を支給したケースは、5月末時点で67人にのぼる。医療経済ジャーナリストの室井一辰さんが解説する。
「ワクチンを原因とした死亡が認定されたことで、改めて“ワクチンは薬なんだ”ということが認識され始めました。薬には必ず副作用があるものなので、その点は重く受け止めるべきだと思います。コロナによる重症化リスクと副反応リスクの両者を考え、若くて基礎疾患のない人は接種を避けるという選択肢はある」
「副作用」と「副反応」は英語ではどちらも「サイドエフェクト(side effect)」。副作用は薬の主成分が有効性を発揮することに付随して、ほかの部分に悪く働くことをさす。
「一方、副反応はワクチンの成分そのものではなく、自己免疫疾患のように、ワクチンに対して体が過剰反応することなどが原因で引き起こされるものも含みます。
例えばリウマチは、免疫システムが自分自身を攻撃して症状が起きる自己免疫疾患ですが、原因は完全にはわかっていない。免疫にはまだ解明されていない部分が多く、個人差も大きい。ワクチンそのものは毒でなくても、それによって体が過剰反応することは、人によっては起こり得るのです」(村上さん)