ライフ

脳動脈瘤、虫垂炎、痔、胃ろう、人工関節…「手術する・しない」の判断が難しい病気

CT検査などの「早期発見・早期治療」は重要だが、“生き急ぐ”のも危険(写真/PIXTA)

CT検査などの「早期発見・早期治療」は重要だが、“生き急ぐ”のも危険(写真/PIXTA)

 手術が必要です──医師がそう言うときは、「患者の命を救い、健康を守るために、やむにやまれぬ状況だから」と考えている人は多いはずだ。だが、実は世の中には本来ならば必要ではなかった手術が行われて、患者が不利益を被るケースが少なくない。新潟大学名誉教授の岡田正彦さんが指摘する。

「数年前にアメリカの統計学者が発表した論文では、アメリカ人の死因の3位は『過剰な医療』や『医療ミス』などの医原病がもたらすものでした。具体的には、入院した際の感染症、不要な薬の副作用、そして不要な手術です。医師はメリットがデメリットを上回ると判断して手術を提案しますが、同時に出血や感染、アレルギー反応などさまざまなリスクを伴う可能性があるのです」

 医療者側のさまざまな思惑が、いらない手術を増やしている──そう指摘するのは医療経済ジャーナリストの室井一辰さんだ。

「そもそも日本では、治療の第一選択肢として手術が選ばれるケースが諸外国より多い。国民皆保険制度により患者の自己負担額が抑えられることが背景にありますが、一方で病院が経営のための経済的なメリットや、医師の実績作りのために手術をすすめる側面もあります。そうした本来ならば必要のない手術を受けた結果、患者の健康状態が悪化したり、QOL(生活の質)が低下するケースは珍しくありません」

 岡田さんが“グレーゾーン”だと指摘するのは、「脳動脈瘤」だ。脳動脈の一部がコブ状に膨らんだもので、このコブが破裂するとくも膜下出血などを引き起こすため、検査で見つかったら手術をすすめられるケースが少なくない。だが脳血管にメスを入れることは大きな危険を伴う。

「そもそもすべてのコブが直ちに破裂するわけではなく、経過観察で問題ないケースが多い。実際に海外の論文では、小さな脳動脈瘤を手術した後に脳梗塞やまひ、認知症などを発症し、命を落とすケースも少なくないと報告されています」(岡田さん)

 室井さんが「現在はほとんどの場で手術は不要」とするのは「盲腸」(虫垂炎)だ。

「昔は盲腸を放置すると腹膜炎で死ぬといわれていたため、すぐに手術をするのが一般的でしたが、現在はのみ薬や点滴で完治できるようになり、大きな傷をつけてまで手術する必要はなくなりました」(室井さん)

 海外では、盲腸が腸内細胞の制御にかかわっているため、手術で盲腸を切った人の方が、そうでない人より大腸がんを発症しやすいというデータもある。そうした、本来必要だったはずの器官を切除したことによって引き起こされる不調もある。

関連キーワード

関連記事

トピックス

新恋人のA氏と腕を組み歩く姿
《そういう男性が集まりやすいのか…》安達祐実と新恋人・NHK敏腕Pの手つなぎアツアツデートに見えた「Tシャツがつなぐ元夫との奇妙な縁」
週刊ポスト
女優・八千草薫さんの自宅が取り壊されていることがわかった
《女優・八千草薫の取り壊された3億円豪邸の今》「亡き夫との庭を遺してほしい」医者から余命宣告に死の直前まで奔走した土地の現状
NEWSポストセブン
あとは「ワールドシリーズMVP」(写真/EPA=時事)
大谷翔平、残された唯一の勲章「WシリーズMVP」に立ちはだかるブルージェイズの主砲ゲレーロJr. シュナイダー監督の「申告敬遠」も“意外な難敵”に
週刊ポスト
左から六代目山口組・司忍組長、六代目山口組・高山清司相談役/時事通信フォト、共同通信社)
「六代目山口組で敵う人はいない」司忍組長以上とも言われる高山清司相談役の“権力” 私生活は「100坪豪邸で動画配信サービス視聴」も
NEWSポストセブン
35万人以上のフォロワーを誇る人気インフルエンサーだった(本人インスタグラムより)
《クリスマスにマリファナキットを配布》フォロワー35万ビキニ美女インフルエンサー(23)は麻薬密売の「首謀者」だった、逃亡の末に友人宅で逮捕
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左/バトル・ニュース提供、右/時事通信フォト)
《激しい損傷》「50メートルくらい遺体を引きずって……」岩手県北上市・温泉旅館の従業員がクマ被害で死亡、猟友会が語る“緊迫の現場”
NEWSポストセブン
財務官僚出身の積極財政派として知られる片山さつき氏(時事通信フォト)
《増税派のラスボスを外し…》積極財政を掲げる高市早苗首相が財務省へ放った「三本の矢」 財務大臣として送り込まれた片山さつき氏は“刺客”
週刊ポスト
WSで遠征観戦を“解禁”した真美子さん
《真美子さんが“遠出解禁”で大ブーイングのトロントへ》大谷翔平が球場で大切にする「リラックスできるルーティン」…アウェーでも愛娘を託せる“絶対的味方”の存在
NEWSポストセブン
ベラルーシ出身で20代のフリーモデル 、ベラ・クラフツォワさんが詐欺グループに拉致され殺害される事件が起きた(Instagramより)
「モデル契約と騙され、臓器を切り取られ…」「遺体に巨額の身代金を要求」タイ渡航のベラルーシ20代女性殺害、偽オファーで巨大詐欺グループの“奴隷”に
NEWSポストセブン
イギリス出身のボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
《ビザ取り消し騒動も》イギリス出身の金髪美女インフルエンサー(26)が次に狙うオーストラリアでの“最もクレイジーな乱倫パーティー”
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKI(右/インスタグラムより)
《趣里が待つ自宅に帰れない…》三山凌輝が「ネトフリ」出演で超大物らと長期ロケ「なぜこんなにいい役を?」の声も温かい眼差しで見守る水谷豊
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 維新まで取り込む財務省の巧妙な「高市潰し」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 維新まで取り込む財務省の巧妙な「高市潰し」ほか
NEWSポストセブン