中野:なるほど。本の中で林さんは、「生き残って子孫を残す」という目的を持たないロボットは、弱肉強食の世界で争うというメカニズムも持たないがゆえに、利他的でいられると書かれていますよね。AIと聞いた途端に敵視する人が多い中で、テクノロジーと人間が良好な関係性を築いて融和的な未来をつくるという視点は、今こそ必要なのかもしれません。それに、そんな未来はとっても楽しそうです。それまで見守りたいな。
林:ぼくが生きているうちにやれたら、中野先生にも見てもらえると思いますよ(笑)。
(第3回へ続く)
【プロフィール】
中野信子(なかの・のぶこ)/1975年東京都生まれ。脳科学者・医学博士・認知科学者。東京大学工学部応用化学科卒業。東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。現在、脳や心理学をテーマに研究や執筆の活動を精力的に行っている。科学の視点から人間社会で起こりうる現象及び人物を読み解く語り口に定評がある。近著に、『「バイアス社会」を生き延びる』(小学館YouthBooks)『脳の闇』(新潮新書)などがある。
林要(はやし・かなめ)/1973年愛知県生まれ。 GROOVE X 創業者・CEO。1998年、トヨタ自動車株式会社に入社。 スーパーカー「LFA」やF1の空力(エアロダイナミクス)開発に携わったのち、トヨタ自動車製品企画部(Z)にて量産車開発マネジメントを担当。 2011年、孫正義後継者育成プログラム「ソフトバンクアカデミア」 に外部第一期生として参加し、翌年ソフトバンク株式会社に入社。感情認識パーソナルロボット「Pepper(ペッパー)」プロジェクトに参画。 2015年、GROOVE X株式会社を創業。2018年、家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」を発表。近著に『温かいテクノロジー AIの見え方が変わる 人類のこれからが知れる 22世紀への知的冒険』(ライツ社)がある。
●写真/浅野剛