組員、半グレが配達員に紛れ込む可能性も?
ヤクザ相手に詐欺をするヤツがいるのかと思うが、「偽メールは特殊詐欺のように個人情報がなくても送れる。奴らはランダムにメールアドレスを作成して、一斉に自動送信してくる。相手がヤクザかどうかなんて知りもしない。相手がひっかかるかどうかだけだ」と幹部はいう。
「宅配といえば、あいつ、この前まで宅配のアルバイトをしてたな」と、幹部がある若者の名前を挙げた。特殊詐欺に詳しいその若者は今も幹部の組に所属する現役の組員。その彼がある通販の配送のバイトをしていたという。「小型荷物の宅配はコロナになってから増えて、配送業者はどこも人出不足だから」と話す。
とはいえ、配達員としてアルバイトの登録をするには、運転免許証などの身分証明書のほかに、報酬を振り込むための銀行口座が必要になるはずだ。現役の暴力団員は預貯金口座の開設を断られたり、既存の口座も銀行から解約を求められるのが通常なのだが、どうしているのか。幹部は「昔に作ってあった銀行口座があるんだろう。1日2~3万円になるらしい」。古くからある口座の中には凍結を免れたものもあると聞く。「俺たちは見つかったら即クビだが、組員も稼ぎ口を探している。今はシノギも厳しいからな。だが違う目的で配達員になるようなヤツも出始めるかも」と、幹部は意味ありげに言った。
「半グレのやつらは銀行口座もあるし、クレジットカードも持っている。配達員に紛れ込んでもわからない。半グレは危ないですよとあいつが言ってた」(幹部)。闇バイトに関わる一連の強盗事件では、被害者の名前が載っていた闇リストの存在が問題となった。名簿屋の存在も注目されたが、個人情報保護法の改正で販売されるリストは古いものばかりだ。新しい情報を得るにはどうするのか。その方法の1つが配達員かもしれないと幹部はいうのだ。
「通販サイトの宅配やフードデリバーサービスの配達は、個人情報を取ろうと思えば簡単に取れる。個人の名前に住所に電話番号、ポストに投函でも自宅に行くので住んでいる家がわかる。家を見れば、だいたいの生活レベルはわかる。特殊詐欺でアポ電をかけるには、これだけの情報があれば十分。半グレが配達員にならずとも、アルバイトの配達員をスカウトして情報を集める方が簡単だ」と幹部。
アルバイト代を稼ぎながら個人情報の収集も行う新手の闇バイトは、もうどこかで始まっているかもしれない。