冒頭の70代男性がそうであるように、難聴の問題点は「自覚症状が少ない」ことにある。川越耳科学クリニック院長の坂田英明医師が言う。
「老眼鏡をかけたり、文字から目を離すことで対応できる老眼(目の老化)と違って、聞こえの老化は人とのコミュニケーションに関わることです。相手の話が聞こえない状況に対する後ろめたさがあるからか、周囲に相談しにくく、病院受診を躊躇う人もいるようです」
加齢性難聴は、内耳の有毛細胞(音の振動を電気信号に変えて脳に伝える役割を持つ細胞)が老化により衰えることで発症する。一度失われた有毛細胞は再生しないため、根本的な治療法がない。
「加齢性難聴の進行を止めるには、早期に受診して補聴器などで適切に対応しつつ、音の3要素である高低・強弱・抑揚を意識した聞き取りトレーニングにより、残された有毛細胞を健康に保つ対策が求められます」(同前)
それにはまず、自身の聞こえの状態を把握しなければならない。坂田医師協力のもと、日常生活でチェックできる「診断チャート」を掲載したので参照してほしい。
※週刊ポスト2023年8月4日号