国内

【福島現地ルポ】漁師たちが処理水放出に反発する中国に冷静反論「食いたくねぇなら結構」「自分の首締めてるのがわかんねえのか」

シラス漁で有名な相馬市の松川浦漁港(写真/共同通信社)

シラス漁で有名な相馬市の松川浦漁港(写真/共同通信社)

 処理水の放出により反日ムードが高まる中国から、日本各地に様々な嫌がらせが届いている。バッシングの中心にいる福島の漁港では、怒りを抱えながらも“その先”を冷静に見据える人々がいた。ジャーナリストの西谷格氏がレポートする。

 * * *
 福島第一原発から半径50キロ圏内に位置する相馬市の松川浦漁港。大ぶりの鯛の下処理をしていた男性は中国について吐き捨てるように言った。

「俺たちも大変な思いをしているのに遊び半分でこんなことされてさ。一生恨むよ」

 男性が憤るのは、処理水放出とほぼ同時に始まった中国からの集中的な迷惑電話だ。飲食店やホテル、公共施設など、“電話攻撃”の対象は多岐にわたる。福島県庁には1日で500件もの着信があり、職員たちは暴言を吐かれたり、大声でまくし立てられたりした。

 地元の特産品などを扱う「浜の駅 松川浦」を訪れると、店長が困惑した様子で語る。

「1日100件ぐらい鳴る日もありました。電話に出ても何を言っているか訳が分からず、一方的に切れてしまうんです」

 今も迷惑電話に悩まされている相馬市内のホテルの女将も言う。

「午前0時とか深夜3時とか、とんでもない時間にかかってきます。職業柄、寝る時は枕元に携帯電話を置いているので、睡眠不足になってしまいました。うちに言われても……と思いますし、やり方が汚いですよ」

 ホテルの電話に残された中国の番号に筆者が折り返すと、若い男性が出て、「スマホの調子が悪くて、たまたま間違えてかけてしまったんだ。ただの偶然なんだよ。本当だ」と繰り返すのだった。

 匿名を条件に地元の漁業組合幹部が語る。

「処理水の放出に反対の立場は崩せない。万が一、日本のどこかで海産物から基準値超の放射性物質が検出されたら、福島が悪者にされかねないからな。ただ、政府と真っ向から対立するつもりはないよ。国の支援のおかげで船も修理できて港もきれいになったんでね」

関連キーワード

関連記事

トピックス

日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《本誌スクープで年内活動辞退》「未成年アイドルを深夜自宅呼び出し」SKY-HIは「猛省しております」と回答していた【各テレビ局も検証を求める声】
NEWSポストセブン
12月3日期間限定のスケートパークでオープニングセレモニーに登場した本田望結
《むっちりサンタ姿で登場》10キロ減量を報告した本田望結、ピッタリ衣装を着用した後にクリスマスディナーを“絶景レストラン”で堪能
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
笹生優花、原英莉花らを育てたジャンボ尾崎さんが語っていた“成長の鉄則” 「最終目的が大きいほどいいわけでもない」
NEWSポストセブン
実業家の宮崎麗香
《セレブな5児の母・宮崎麗果が1.5億円脱税》「結婚記念日にフェラーリ納車」のインスタ投稿がこっそり削除…「ありのままを発信する責任がある」語っていた“SNSとの向き合い方”
NEWSポストセブン
出席予定だったイベントを次々とキャンセルしている米倉涼子(時事通信フォト)
《米倉涼子が“ガサ入れ”後の沈黙を破る》更新したファンクラブのインスタに“復帰”見込まれる「メッセージ」と「画像」
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん
亡くなったジャンボ尾崎さんが生前語っていた“人生最後に見たい景色” 「オレのことはもういいんだよ…」
NEWSポストセブン
峰竜太(73)(時事通信フォト)
《3か月で長寿番組レギュラー2本が終了》「寂しい」峰竜太、5億円豪邸支えた“恐妻の局回り”「オンエア確認、スタッフの胃袋つかむ差し入れ…」と関係者明かす
NEWSポストセブン
2025年11月には初めての外国公式訪問でラオスに足を運ばれた(JMPA)
《2026年大予測》国内外から高まる「愛子天皇待望論」、女系天皇反対派の急先鋒だった高市首相も実現に向けて「含み」
女性セブン
夫によるサイバーストーキング行為に支配されていた生活を送っていたミカ・ミラーさん(遺族による追悼サイトより)
〈30歳の妻の何も着ていない写真をバラ撒き…〉46歳牧師が「妻へのストーキング行為」で立件 逃げ場のない監視生活の絶望、夫は起訴され裁判へ【米サウスカロライナ】
NEWSポストセブン
シーズンオフを家族で過ごしている大谷翔平(左・時事通信フォト)
《お揃いのグラサンコーデ》大谷翔平と真美子さんがハワイで“ペアルックファミリーデート”、目撃者がSNS投稿「コーヒーを買ってたら…」
NEWSポストセブン
愛子さまのドレスアップ姿が話題に(共同通信社)
《天皇家のクリスマスコーデ》愛子さまがバレエ鑑賞で“圧巻のドレスアップ姿”披露、赤色のリンクコーデに表れた「ご家族のあたたかな絆」
NEWSポストセブン
硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将(写真/AFLO)
《戦後80年特別企画》軍事・歴史のプロ16人が評価した旧日本軍「最高の軍人」ランキング 1位に選出されたのは硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将
週刊ポスト