生徒に処理水の危険性を説き、岸田批判の作文を書かせる中国の教師(中国のSNSより)

生徒に処理水の危険性を説き、岸田批判の作文を書かせる中国の教師(中国のSNSより)

 広東省では日系企業で働いていた中国人が「福島の放射能のせいで健康被害が出た。治療費を払え」と会社に要求する事案もあったようだ。

 SNS上には日本叩きの「動画」も大量にアップされている。たとえば、中学校の女性教師が電子黒板の前に立ち、生徒にこう声を張り上げる。

「日本人というのはまったく恥知らずです」
「汚染水の排出は人道に反しており、国際法にも違反しています」

 黒板には岸田首相の顔面の写真が大きく引き伸ばされており、憎悪対象として教師は何度も指を差す。日本がいかに自己中心的かつ非人道的であるかを滔々と説明すると、生徒たちは「畜生め!」「人間じゃない!」と怒りのボルテージを上げた。

「みなさん日本を罵りたいと思いませんか? 日本を批判しましょう!」

 こうして教師は作文の授業で子供たちに岸田首相への手紙を書かせるのだった。動画の投稿者は「この先生は素晴らしい!」と絶賛した。

 中国貴州省からは、自身の経営する日本料理店を自らの手で破壊する男性の姿が投稿された。

「俺には中華民族としての思いがある。日本に関するものはすべてぶっ壊すことにした!」

 店内の壁に貼られていた日本アニメのポスターをビリビリと破り、暖簾や装飾品を乱雑に引き裂いていった。今後は中華料理店としてリニューアルするという。

 上海の日本料理店では、「日本産不使用」を宣言する店も現われ、事態は混沌としている。

 中国からの圧力は始まったばかり。福島の漁師たちのように、動じることなく対応したいものだ。

【プロフィール】
西谷格(にしたに・ただす)/ライター。1981年、神奈川県生まれ。地方紙『新潟日報』記者を経て、フリーランスとして活動。2009年に上海に移住、2015年まで現地から中国の現状をレポート。著書に『香港少年燃ゆ』『ルポ 中国「潜入バイト」日記』など。

※週刊ポスト2023年9月15・22日号

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