多剤を処方されている高齢患者は少なくない

多剤を処方されている高齢患者は少なくない

 ただし、漫然とのみ続けるのはやめるべき。

「1か月のんでも症状の改善がなければ、薬が効いていないという証拠。それ以上のんでも副作用のリスクがあるだけです」

 頭痛薬や便秘薬であれば服用しながら並行してほかの対処法をとることで、減薬につなげることができる。

「肩こりからくる頭痛なら、運動やマッサージ、お灸など、薬以外の方法も考えてみてください。便秘は食生活の改善も大きなファクターになる。処方された後、薬に頼らずに症状がよくなる方法を探ってみることも大事です」

副作用と薬の効果を天秤にかける

 段階を踏みながら減薬できる薬がある一方、「いますぐやめるべき薬もある」と注意を促すのは、中野病院の薬剤師・青島周一さんだ。

「明らかに副作用が出ていて、リスクが服薬によって得られる利益を上回っているなら、やめるべきです。代表的なものは作用の強い睡眠薬。さまざまな種類がありますが、高齢者なら薬が作用する時間が長いタイプのものに気をつけてほしい。特に薬の血中濃度が半分に下がるまでに6時間以上かかるものは、日中も眠気がとれずにふらつきの原因になる。交通事故などにもつながります」(青島さん・以下同)

 加齢に伴いリスクが高まる逆流性食道炎をはじめとした症状の緩和などを目的に胃酸の分泌を抑える胃薬の「プロトンポンプ阻害薬」も、漫然とのむことで副作用が出やすい薬の代表格。

「作用が強力なため、胸やけや胃潰瘍の症状を改善する効果が高い一方、さまざまな副作用のリスクがあります。短期的に使用するなら問題はありませんが、年単位で長期にわたってのみ続けた場合、下痢や感染症などが報告されています。

 胃酸には雑菌などの繁殖を抑える働きがあるゆえに、薬で分泌が抑制されると消化管の免疫力が低下し、呼吸器系の感染症や下痢の頻度が増えるのです。近年の研究では、骨折のリスクが増えるという報告もあるため、一度症状が改善した段階で中止を検討することが望ましいです。長期的に服用するメリットは限られています」

 いくら元の症状が治まっても、別の不調で体が蝕まれれば本末転倒だ。長く服用することによるデメリットはほかにもあると石原さんが続ける。

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