揉めると困ります、本当に難しい
「女性の格好をしていようがいまいが身体は男性ですよね。それが女性用トイレに入る。それは現場では揉めます。変な人が入ってきた、と言う利用者のほうが圧倒的に多いのですから。本当に難しいんですよ」
この問題は本当に難しいため、そのトラブルの原因となった言葉など、むやみな取り上げ方はできない。どちらが正しいという話でなく、現場の彼女にそれをどう判断しろというのか、という問題提起である。
「男性が女性用トイレに入ってきたら、それは声掛けしますし、責任者とか警備員に通報もします」
めったにないこと、とはいえ日ごろの仕事で遭遇するには確かに難しいというか、彼女の苦労はわかる。そもそも「ちゃんと身体は男性」かも現場の担当者にはわからないし知りようもない。それでなくとも不特定多数が使用するトイレ、便利さと引き換えのトラブルを抱えている。
「さすがに『そうですか、女性ですか、ではどうぞ』は無理ですよ」
これはトランスジェンダーとか以前の、彼女の現場における「仕事」としての対応である。そういうことはこれまであったのか。
「女性用トイレにカメラを仕掛けて捕まった男性はいました。酔っ払って嫌がらせで入ってきた男性も。あとは今回の『私は女性です』とおっしゃって女性用トイレを使おうとした方ですね。これは他の女性のお客様も複数いらっしゃったので騒動になってしまいました。泣き出してしまう女性の方もいました。誰がどう見ても大柄な男性でしたから」
その方が本当にトランスジェンダーかどうかはわからない。彼女もわからない。疑いとかでなく、現場レベルの「現実」である。
しかしこれまでは「男性」(便宜上使う)であるなら施設としてお断りも、排除もできる。差別とかでなく、あくまで施設としての判断だ。しかし性別適合手術をしているかどうか、まではわからない。
「それを私たちが判断するのは無理です。差別するつもりはないんですよ、ただ他の女性のお客様から苦情が出たら、そうするしかありません」