ライフ

人気ノンフィクション作家が厳選 秋の夜長に読むべき「ドキュメントコミック5冊」

石井光太氏

ノンフィクション作家の石井光太氏にドキュメントコミックについて聞いた

 漫画が世界に誇る日本の文化であることに異論はないと思われるが、現在の日本のコミック業界は、スマホが普及したことで電子コミックが成長し、かつてないほど多種多様な作品が生み出される活況を迎えている。なかでも、ここ最近、注目を集めているのが、作者の実体験や取材をもとにして執筆されたドキュメントコミックだ。

 活字ではなくコミックだからこそ読みやすく、読み進めていくと価値観を揺さぶるような体験を味わえる……そんなドキュメントコミックのオススメ作品について、数々の著書を持つノンフィクション作家で、「ドキュメントコミック大賞」(小学館「ビッグコミック スペリオール」主催)の審査員を務める石井光太氏に聞いた。

ドキュメントコミックには、活字にはない漫画ならではの強みがある

──ノンフィクション作家である石井さんにとって、ドキュメントコミックとは一体どんなものでしょうか?

 これまでベストセラーとなった『いちえふ 福島第一原子力発電所労働記』(竜田一人/講談社刊)や『失踪日記』(吾妻ひでお/イースト・プレス刊)といった作品を読んだことはあったのですが、今回、「ドキュメントコミック大賞」の審査員になったことで、改めてどんな作品があるのか読んでみたいとお願いして、編集部からいろいろな作品を送ってもらいました。

 たくさんの漫画作品があるなかで、ドキュメントコミックをどう定義するかは、人によって違うでしょうし、色々な意見があると思います。現実を扱っていれば、すべてドキュメントコミックになるかと言えば、そうではないでしょう。ただ、活字と漫画の伝える力には大きな違いがあり、その漫画の強みをうまく使えているかどうかが、重要な要素だと思いました。

 普段、私が書いている活字のノンフィクションで何かの事件を取り扱う時には、当然、細部まで取材して、詳細なディテールを文章で描写することで、その事件のことを読者に伝えます。その文章の中に固有名詞や具体名がないことはあり得ないわけですが、漫画であればそれが可能になるというのは、今回の発見のひとつでした。

 あえて具体的な宗教名を出さずに構成している『「神様」のいる家で育ちました ~宗教2世な私たち~』(菊池真理子/文藝春秋刊)は、まさにその強みを活かした作品だと感じて、興味深く読ませてもらいました。

──旧統一教会の問題が噴出している最中に刊行されたこともあって、とてもタイムリーな作品になりますね。

 その通りです。みんなの関心が高く、今すぐ知りたいと感じているものをドンとやるというジャーナリズムとしての価値が、この作品にはあると思いました。その上で、作中に宗教名を出さないことで、宗教2世の抱える問題が抽象化されて、普遍的な問題として読み手に伝わってくると私は感じました。

関連キーワード

関連記事

トピックス

都内の人気カフェで目撃された田中将大&里田まい夫妻(時事通信フォト/HPより))
《ファーム暮らしの夫と妻・里田まい》巨人・田中将大が人気カフェデートで見せた束の間の微笑…日米通算200勝を目前に「1軍から声が掛からない事情」
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
新横綱・大の里(時事通信フォト)
《横綱昇進》祖父が語る“怪物”大の里の子ども時代「生まれたときから大きく、朝ご飯は2回」「負けず嫌いじゃなかった」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
ヤクザが路上で客引きをしていた男性を脅すのにトクリュウを呼んで逮捕された(時事通信フォト)
《ヤクザとトクリュウの上下関係が不明に》大阪ミナミでトクリュウを集めて客引き男性を脅して暴力団幹部が逮捕 この事件で”用心棒”はどっちだったのか 
NEWSポストセブン
2013年大阪桐蔭の春夏甲子園出場に主力として貢献した福森大翔(本人提供)
【10万人に6例未満のがんと闘う甲子園のスター】絶望を支える妻の献身「私が治すから大丈夫」オリックス・森友哉、元阪神・西岡や岩田も応援
NEWSポストセブン
新横綱・大の里(時事通信フォト))
《地元秘話》横綱昇進の“怪物”大の里は唯一無二の愛されキャラ「トイレにひとりで行けないくらい怖がり」「友達も多くてニコニコしてかわいい子だったわ」
NEWSポストセブン
ミスタープロ野球として、日本中から愛された長嶋茂雄さんが6月3日、89才で亡くなった
長島三奈さん、自身の誕生日に父・長嶋茂雄さんが死去 どんな思いで偉大すぎる父を長年サポートし続けてきたのか
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
金髪美女インフルエンサー(26)が “性的暴力を助長する”と批判殺到の「ふれあい動物園」企画直前にアカウント停止《1000人以上の男性と関係を持つ企画で話題に》
NEWSポストセブン
逮捕された波多野佑哉容疑者(共同通信)。現場になったラブホテル
《名古屋・美人局殺人》「事件現場の“女子大エリア”は治安が悪い」金髪ロングヘアの容疑者女性(19)が被害男性(32)に密着し…事件30分前に見せていた“親密そうな様子”
NEWSポストセブン
東京・昭島市周辺地域の下水処理を行っている多摩川上流水再生センター
《ウンコは資源》排泄大国ニッポンが抱える“黄金の資源”を活用できてない問題「江戸時代の取引金額は10億円前後」「北朝鮮では売買・窃盗の対象にも」
NEWSポストセブン
ブラジル公式訪問中の佳子さま(時事通信フォト)
《佳子さまの寝顔がSNSで拡散》「本当に美しくて、まるで人形みたい」の声も 識者が解説する佳子さま“現地フィーバー”のワケ
NEWSポストセブン