そんな中から乗馬の世界で頭角を現わしてくる馬もいます。賞金の出る引退競走馬杯なんていう大会もありますし、競馬学校に引き取られれば、若い騎手候補生のいい先生になります。
重賞を勝っていたり、見栄えのする馬体だったりすると競馬場の誘導馬として声がかかることもあります。藤沢和雄厩舎のゴーフォザサミットは2017年のデビュー戦から私が騎乗、3歳4月には青葉賞を勝ってダービーに連れて行ってくれました。そして2021年2月28日、騎手として最後に騎乗した思い出深い馬です。さらに翌年には藤沢先生の引退をも見送ってくれました。その後は蛯名厩舎開業時の管理馬になりましたが、すでに7歳だったこともあって引退させました。とてもおとなしい馬だったのがよかったのか、中京競馬場で誘導馬になっています。機会があったらぜひ旧交を温めたいと思います(笑)。
高齢化社会は人間だけの課題ではありません。管理馬と向き合いながらも、時々昔共にレースを走った馬たちのセカンドライフについても思いを馳せています。
【プロフィール】
蛯名正義(えびな・まさよし)/1987年の騎手デビューから34年間でJRA重賞はGI26勝を含む129勝、通算2541勝。エルコンドルパサーとナカヤマフェスタでフランス凱旋門賞2着など海外でも活躍、2010年にはアパパネで牝馬三冠も達成した。2021年2月で騎手を引退、2022年3月に52歳の新人調教師として再スタートした。
※週刊ポスト2023年11月17・24日号