米国のキッシンジャー国務長官と対談する田中角栄氏(時事通信フォト)

米国のキッシンジャー国務長官と対談する田中角栄氏(時事通信フォト)

 大蔵大臣時代には、新人官僚にこう訓示した。

「諸君らの上司にはバカがいるかもしれない。もしバカがいたら、バカなんだから諸君のアイデアを理解できないだろう。そんな時は迷わなくていい。遠慮なく大臣室に駆け込んでこい」

 叩き上げの政治家・角栄は持ち前の政策力と実行力、人心掌握力で郵政大臣、大蔵大臣、通産大臣として難題を処理し、54歳で総理大臣へと駆け上がる。

「一気に使え」

「決断と実行」──それが首相就任時に掲げたスローガンだ。

 外交的には日中国交回復を決断、エネルギー問題でも米国の石油メジャー依存からの脱却をめざして独自の資源外交を展開した。文字通り有言実行の政治家だった。

 角栄に関する多くの著書がある政治評論家・小林吉弥氏が語る。

「二枚舌は使わず、やると言ったら必ず実行するのが角栄でした。『金というものはチマチマ使うより、ここぞという時、一気に使え。そのほうが何倍も効果が大きい』というのが持論で、財政出動する場合も、政権の人気取りでバラ撒くのではなく、国民の一番求めている政策を考え、財源まで手当てして決断する。たとえば岸田さんの4万円減税はどこを向いた政策かわからないし、チマチマ金を使っても効果が出ない。角栄であれば思いきってただちに1人10万円以上配るでしょうね」

 あるいは、当時のように国民にこう説くかもしれない。

「目先の握り飯(所得税減税)もさることながら、柿の種(企業減税)を撒き、木(経済)が育てば、おいしい果実はおのずから食べられる」

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