風間杜夫

『スチュワーデス物語』で共演した堀ちえみとの思い出を語る風間

いつまでもアマチュアでい続けたい

『蒲田行進曲』が大ヒットを記録すると、翌1983年にはテレビドラマ『スチュワーデス物語』(TBS系)で教官役のオファーが来た。この作品は、当時アイドルとして人気を博した堀ちえみ(当時16才)が、風間演じる教官の指導のもと、不器用ながらもスチュワーデスへの道を歩む物語だ。

「ちえみちゃんは当時、本当に忙しかったから、撮影の合間によく居眠りをしていましたよ。アイドルは大変だなあと思いましたね。あのドラマの後は、ぼくまで“教官、教官”と女の子たちから騒がれて、遅れてきたアイドル状態(笑い)。コンサートをやったり写真集を出したりしました。つかさんまで、“あの役はぴったりだ。あの路線で行け”って言ってくれたのは意外でした」

 その後は、現代ドラマだけでなく、時代劇、劇団新派(明治時代に始まった演劇の一派で、旧派の歌舞伎に対する新派を名乗る)、声優、一人芝居など、あらゆるジャンルの“芝居”に挑戦し続けた。新ジャンルへの挑戦は、いまも続いているわけだが、風間は一体どこを目指しているのか──。

「1980年に『四季・奈津子』という映画に出演した際、映画評論家の白井佳夫さんに“日本映画界に初めて、普通の男を普通に演じられる俳優が出てきた”と評されたんです。すごくうれしかった。芝居は熟達しなければいけないけれど、ぼくはアマチュアでい続けたいと思っていたんです。それが認められたなと。プロ意識を持つと、演技が固定されてしまう。そうならないよう、いろいろなジャンルに興味を持って、初めての世界に飛び込んでいきたいんです」

 スタイルを確立していないからこそ、どんな役でもできる、というわけだ。一方で、風間はあまりほかの役者の舞台を見ないという。

「だってうまければ嫉妬するし、へたなら文句を言いたくなる(笑い)。芝居は見るものじゃない、やるものなんですよ。ぼくが出てない芝居なんてつまらないでしょ(笑い)。だから何才になっても現場にいたいんです」

 そう話す風間の目は力強く、役者としての矜持にあふれていた。

(了。前編を読む

【プロフィール】
風間杜夫(かざま・もりお)/1949年東京生まれ。8才で児童劇団『東童』に入団し、翌年に東映児童演劇研修所の一期生となると、13才まで子役として活躍。早稲田大学第二文学部に入学し(後に中退)、演劇活動を再開する。1971年、大竹まことらと『表現劇場』を旗揚げし、1972年、日活ロマンポルノの映画で「風間杜夫」として銀幕デビュー。1977年からは劇作家・つかこうへい作品に出演するようになり、その名を知られていく。1983年、紀伊國屋演劇賞個人賞受賞。2023年春の叙勲で旭日小綬章受章。

【最新舞台情報】名優たちの“競演”が見もの!
『大誘拐〜四人で大スペクタクル〜』
2月6〜11日に東京・シアター1010で公演(愛知・大阪・兵庫・山口など全国13か所を巡演予定)
大富豪とし子(白石加代子)の誘拐を企てる戸並健次(中山優馬)だが、身代金の低さに激高したとし子に逆に主導権を握られ……。協力者のくーちゃん(柴田理恵)、立ちはだかる警察本部長・井狩大五郎(風間杜夫)も巻き込んで、大波乱を巻き起こす抱復絶倒の大誘拐劇。

編集協力/桜田容子 撮影/政川慎治

※女性セブン2024年2月15日号

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