おそらく漫才コンビというものは出会ったこと、そして、成立していることですでに奇跡なのだ。
ザ・ぼんちは最初の14年で絶頂を極め、16年の空白を経て再結成し、そこからさらに22年の歳月が流れている。そこには、他人には想像できない紆余曲折があったはずだ。その上、2人はまだ戦うことに飢えている。
2月13日、ザ・ぼんちは大阪で開催されたTHE SECONDの選考会に出場した。ひときわ大きな拍手で迎えられた2人は、おさむのギャグやボケで何度となく爆笑をかっさらった。じつは関係者は時間オーバーをかなり心配していたようなのだが、ネタ時間は5分52秒。まさとの手綱さばきは、見事という他なかった。
漫才とは、畢竟、芸人の生き様を映す芸だ。選考会で披露した「5分52秒」。そこには今の彼らが如実に反映されていた。栄光と挫折、反抗と老い、そして、そこから醸し出される可笑しさ。
選考会段階で、まずは130組超から32組に絞られる。通過者は近日、発表される見込みだ。
(了。前編から読む)
【プロフィール】
中村計(なかむら・けい)/1973年、千葉県生まれ。ノンフィクションライター。著書に『甲子園が割れた日』『勝ち過ぎた監督』など。近年はお笑い関連の取材・執筆を多く手がける。趣味は落語鑑賞。近著に『笑い神 M-1、その純情と狂気』。
※週刊ポスト2024年3月1日号