故・池田大作氏(時事通信フォト)
選挙が仕事の「季節労働者」
調査では、公明党からの受注を増やす、設立から新しい企業群の存在も明らかになった。東京・豊島区を本社に1989年に設立された印刷会社Xは、3年で公明党からの受注を5000万円から3.3億円へ7倍弱に増やした。ポスターなどの印刷代が多く、過半は政党交付金から支払われている。
X社全体の売上高は2022年度で4.8億円。2022年度は売上の7割が公明党から、というほどの比重を占めたことになる。
調査会社のデータには主要取引先に「創価学会」とも記されているが、X社の社長に電話で直撃すると「違います。うちは外郭企業ではないです」としてこう語った。
──党と学会の両方と取引が?
「そうそう。選挙があれば公明党からの受注がよくなるが、なければ仕事がない。季節労働者みたいなものです」
第2次安倍政権の発足以降、公明党は集団的自衛権の行使を認める安全保障関連法に賛成するなど、安倍官邸に引きずられがちになった。反動からか、18歳以下への10万円給付などで官邸から譲歩を引き出し、実績としてアピールする場面が増えた。実績を示すポスターの更新で、商機が生まれたのか。
そもそも、学会関連企業が公明党から政治資金で支払いを受けることに問題はないのか、という疑問が払拭できない。学会、党、7社にその問いを向けた。
党と日光警備保障が「問題があるとは考えていない」と短く答えたほかは「担当者が1日不在」になったり、「学会広報室が回答する」(東西哲学書院)といった返答。その学会広報室は「この種の質問にはお答えしない」とするのみだった。
関連企業と一体となった創価学会は、公明党の党勢拡大を宗教活動の核にして党を支えてきた。だが今、党の金が学会経済を支える倒錯が起きている。この違和感はこれから膨らむ可能性がある。
(了。前編から読む)
【プロフィール】
広野真嗣(ひろの・しんじ)/ノンフィクション作家。神戸新聞記者、猪瀬直樹事務所スタッフを経て、フリーに。2017年、『消された信仰』(小学館文庫)で小学館ノンフィクション大賞受賞。近著に『奔流 コロナ「専門家」はなぜ消されたのか』(講談社)。
※週刊ポスト2024年3月22日号