入学式の数日後に、無理を承知で山下監督に直談判したという(筆者撮影)

入学式の数日後に、無理を承知で山下監督に直談判したという(筆者撮影)

甲子園の初優勝へ

 山下監督も小学生時代に星稜の野球部を自由研究に選ぶほどの彼女の熱意に打たれ、検討を開始する。学校や野球部のOB会、保護者会に相談し、女子マネージャーを希望しながら野球放送部に回っていた2年生の女子生徒にも確認を入れる必要があった。

 正式に採用が決まったのは、昨夏の甲子園が終わった8月の下旬だ。野球放送部に在籍していたふたりの2年生と共に、マネージャーとなった。

「入部にあたって、『ベンチには入れない』ということと、『SNS禁止』『部内恋愛禁止』という条件が出されました。もちろん、異論はありません! ただ、ベンチに入ってみたいという夢はあります……」

 朝から練習のある日は、4時や5時に起きて準備し、6時半には野々市市の自宅を出発するという。

「勉強と部活の両立は大変ではあるけど、チームが試合に勝ったりすると報われた気持ちになるし、最高に嬉しいです。甲子園で星稜が初優勝できるようにサポートしたい」

 彼女にとって心強い先輩もいる。野球部の谷村誠一郎部長は、1979年夏の甲子園で箕島(和歌山)と延長18回を戦った末に敗れた星稜で、マネージャーを務めていた偉大な先人なのだ。谷村部長は言う。

「私は石川県内の公立校で監督を務めてきまして、女子マネージャーがいることのよさも見てきました。本人のやる気さえあれば、受け入れてもいいんじゃないかという話は監督ともしました。彼女にはもっともっと高校野球のこと、星稜野球部のことを勉強して、選手が野球に集中できる縁の下の力持ちとなってもらいたい」

 最後に、星稜に女子マネージャーが誕生して以来、秋季石川大会、北信越大会、明治神宮大会、そしてセンバツの1、2回戦と野球部は無敗であることを付け加えておく。

◆取材・文/柳川悠二(ノンフィクションライター)

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