掛布雅之は誰もが認める「練習の鬼」だった
江夏:本人から聞いた。
田淵:カケ、どうしてスターが出されるかわかるか? さっきの優勝の話と同じで年俸が高くなると出すんだよ。今の阪神と昔の阪神は全然違う。
江夏:カケといえば、昭和54年(1979年)の48本打ったホームラン王。いつか獲るだろうと思っていたけど、嬉しかったな。
田淵:その小さな身体でよく打ったよ。カケがどれだけ飲んでも必ず寝る前に素振りして、努力する姿を知ってたからね。本当頑張ってたよな。
掛布:ありがとうございます。僕はホームラン王よりもオールスターで江夏さんから打ったホームランのほうが嬉しいんですよ。横浜スタジアムでのホームラン。
田淵:豊はどこのユニフォームを着てたの?
掛布:日本ハムです。三塁ベースを回った時、江夏さんに「ありがとうございます」って会釈したら「このやろー」って感じで優しく睨まれて。
江夏:そうやったな。懐かしい思い出だよ。
【プロフィール】
江夏豊(えなつ・ゆたか)/1948年、兵庫県生まれ。1967年に阪神入団後、南海、広島、日本ハム、西武と渡り歩く。1984年に引退。オールスターでの9連続奪三振、日本シリーズでの「江夏の21球」など様々な伝説を持つ
田淵幸一(たぶち・こういち)/1946年、東京都生まれ。1969年にドラフト1位で阪神入団、ルーキーイヤーに22本塁打で新人王。1975年に本塁打王を獲得し、通算474本塁打。引退後はダイエー監督、阪神コーチなど指導者としても活躍
掛布雅之(かけふ・まさゆき)/1955年、千葉県生まれ。1974年にドラフト6位で阪神入団。主砲として本塁打王3回、打点王1回、オールスターゲームMVP3回などの成績を残した。1988年の引退後は阪神二軍監督など球団での業務も経験した
【聞き手】
松永多佳倫(まつなが・たかりん)/ノンフィクション作家。1968年、岐阜県生まれ。琉球大卒業後、出版社勤務を経て執筆活動開始。最新刊『92歳、広岡達朗の正体』(扶桑社)が好評発売中
撮影/松田忠雄
※週刊ポスト2024年5月17・24日号
