ジャーナリスト・横田増生氏がS’UIMINでの脳波計測を受けた時の様子
「睡眠時間が6時間以下でも問題がないという、真正のショートスリーパーもいるにはいますが、それは数百人に1人程度で非常にまれです。自称ショートスリーパーの99%以上はただの寝不足であり、そのことに気づいていない人たちです。
睡眠を削ってでも勉強したほうがいいという一昔前までの考えは、まったく間違っています。先に述べた通り、睡眠不足だと脳のパフォーマンスが落ちるのに加え、睡眠には記憶を整理して長期記憶として定着させる働きがあることが分かっています。また、眠ることで洞察力がつき、それまで見えてこなかった物事のつながりなどが見えてくるという実験結果もあります。眠る時間を削って勉強するのは、科学に反したやり方なのです。
さらに寝すぎという言葉は誤解を招きます。人は必要以上に眠ることはできないようになっているからです。自称ショートスリーパーも、受験生も、1時間でも2時間でも多く眠るほうが、良い結果につながります」
睡眠負債は、人びとの健康面にどのような悪影響を及ぼすのだろうか。
「まずうつ病などのメンタルな不調に陥りやすくなります。また、高血圧、高脂血症、糖尿病、高尿酸血症……などといった成人病にかかりやすくなります。がんのリスクも高まる。新型コロナの時に言われたように、感染症に罹患するリスクも上がります。
何より、肥満になりやすいのです。9時間睡眠と4時間睡眠で比べた場合、4時間睡眠は、1日当たりの必要カロリーが増え、体重も増え、2週間で体脂肪率が11%も増加することが分かっています」
【プロフィール】
横田増生(よこた・ますお)/1965年福岡県生まれ。関西学院大学を卒業後、予備校講師を経て、アメリカ・アイオワ大学ジャーナリズム学部で修士号を取得。1993年に帰国後、物流業界紙『輸送経済』の記者、編集長を務める。1999年よりフリーランスとして活躍。ユニクロなど大企業への潜入取材で知られ、2020年、『潜入ルポ amazon帝国』で第19回新潮ドキュメント賞を受賞(『潜入ルポ アマゾン帝国の闇』と改題し新書化)。
(後編に続く)
※週刊ポスト2024年5月17・24日号
