入社して間もなくプロレスの実況を務め、「昭和プロレスのご意見番」となった(写真/Aflo)
症状は緩やかに、だが確実に進み、朝、口にした内容を覚えている間隔が夜、昼、午前中とどんどん短くなった。
意を決して病院を訪れると「初期の認知症」と診断され、物忘れ以外の症状も出るようになった。
妻は昔から車好きで、スポーティーな外国車でのドライブを楽しんでいたが、「万が一にも事故を起こすわけにいかない」と、77才で自発的に免許を返納した。
「彼女は昔から料理が得意だったのですが、材料の準備や調理に時間がかかるようになった。以前は20分ほどでサッと作っていたけど、いまは1時間以上かかりますね。
また以前はひとりでいるときも丁寧に料理をして食べるタイプでしたが、ぼくがいないときは料理せずに、買ってきたパンなどで済ますようになったのか、ここ最近で3kgほどやせたことも心配です。
認知症は自分ひとりだと面倒で料理をしなくなるようです。実際にぼくが出張で何日か家を空けて帰宅すると、台所がまったく使われた様子がなく驚いたことが何度もあります」
最近は外で仕事をしていても1日5回ほど自宅に電話して、妻の安否や食事の内容を確認しているという徳光。妻と離れていると不安になるが、一緒にいるときは昔と変わらず、楽しい時間を過ごせるという。
「ぼくと一緒のときは料理をする意欲が出てくるみたいです。昔よりずっと時間はかかるけど、不思議なことに味はまったく変わらずおいしいまま。
特にキャベツとひき肉に片栗粉をまぶしてソースで味をつけたオリジナル料理は絶品。最近は時間をかけて料理してくれる妻に感謝して、『お前の作った料理は最高だよ』と伝えています」
長年、繰り返した大切な習慣は体が覚えているのかもしれない。思い返せば、徳光が妻と出会ったのも料理がきっかけだった。
(後編に続く)
※女性セブン2024年5月30日号