福井鉄道では、低床車の路面電車が走っている(2021年3月撮影:小川裕夫)

福井鉄道では、低床車の路面電車が走っている(2021年3月撮影:小川裕夫)

 福井鉄道は特殊な事情を抱えるが、だからと言ってえちぜん鉄道・ハピラインふくいも決して楽観できる立場にはない。そうした危機感の高まりもあり、福井県鉄道協会が3社の連携を模索する団体として立ち上がった。

 気になるのは、福井県鉄道協会の設立によって3社が将来的に統合する可能性だが、「福井県鉄道協会の設立は、統合を見据えた動きではない」(同)と担当者は言う。

地方で複数の鉄道会社が連携する動き加速か

 同じ地域を営業範囲とする鉄道会社が複数社あれば、運賃やサービスなどを競い合うことになる。それは利用者にメリットをもたらすこともあるが、人口減少・少子高齢化で利用者減になっている昨今は共倒れをするリスクも高まっている。

 そうした潮流を踏まえると、福井県鉄道協会のように連携を模索することで利用者還元をすることもひとつの選択肢だろう

 県内の鉄道会社がその垣根を越えて連携する団体を立ち上げるのは、初めてのケースだという。福井県が成功モデルになれば、今後は石川県や富山県といった北陸地方にも波及する可能性は否定できない。

 実際、石川県には新幹線開業によって第3セクターに転換したIRいしかわのほか、北陸鉄道とのと鉄道が、富山県にはあいの風とやま鉄道のほか富山地方鉄道と万葉線、黒部峡谷鉄道など複数の鉄道会社が運行している。

 基本的に鉄道はスケールメリットを活かしやすい事業と言われてきた。ネットワークを過剰に拡大させると赤字路線を抱えるリスクもあるが、総務や広報といったバックオフィス部門はネットワークが拡大することで業務の効率化を図ることができる。

 福島交通・茨城交通・湘南モノレールなど県域を越えて多くの交通事業者を束ねるみちのりホールディングスという新しいモデルケースも生まれつつある。

 人口減少や過疎化によって特に地方鉄道の経営は厳しさを増しているが、それでも何とか生き残りを模索する福井県鉄道協会試みに注目が集まる。

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