2歳の頃に撮影された家族写真。母の膝の上にいるのが南。

2歳の頃に撮影された家族写真。母の膝の上にいるのが南

炒飯はおかずと一緒に食べてこそ

 私たちは兵庫・尼崎に住んでいたのですが、わざわざ一張羅を着て電車に乗り、大阪・梅田の新阪急ホテルまで行くのです。目指すは、27階の中華料理「グランド白楽天」。5人姉妹ですから、このときの争いはすごいですよ。普段は、ゆっくり話す機会もありませんから、いましゃべらなきゃ、いつしゃべる(笑い)。

 末っ子の特権で、私はいつでも母の隣に座れました。もう一方の席は姉たちの戦場です。われ先にと話しかけながら、お箸やレンゲも油断なく動かし、気持ちもお腹も満たされた古きよき中華料理は思い出の味です。

「本格」という名のもとに、最近は四川省や湖南省、あるいは東北三省といった多量のスパイスを使った刺激的な料理が流行っていますが、私の好みは、中華といったら広東料理しかなかった頃の、優しくて丸い味。

 豚肉、玉ねぎ、ピーマン、にんじんのクラシックな酢豚。甘酢ソースはケチャップ風味で、パイナップルも欠かせません。炒飯も「いまの感じ」とはずいぶん違いましたよね。いまの炒飯は、ご飯パラパラ、味つけしっかり、それだけで一品料理になるぐらいの存在感。

 私は「おかずと一緒に食べてこそ」の炒飯が好きなんです。グランド白楽天の炒飯はパラパラというより、しっとりふっくら。味つけも控えめで、おかずと一緒に食べてちょうどいい。お店では五目炒飯でしたけど、具材はもっとシンプルでもいい。賽の目に切った硬めのチャーシューとねぎだけで充分かもしれません。

 いまの家族の思い出の一品となると、選ぶのは大変です。同居している息子夫妻は、ふたりとも料理上手。息子が作るビーフウェリントンも、娘のガパオライスも大好物です。

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