『だれかtoなかい』でMCを務める中居正広

『だれかtoなかい』でMCを務める中居正広

「だれか」は戦略的な起用が可能

 今年2月、松本さんの活動休止で番組名を変える際、あえて「だれか」というフレーズを入れた以上、入れ替え前提のコンセプトであることは間違いないでしょう。

 また、制作サイドにとって「だれか」は、「人気やニーズ、最近の実績やネット上の優位性などの戦略性を持って選べる」「数字や反響が伴わなければ短い期間で交代したり、仕事の都合によって再就任したりも可能」などのメリットがあります。

 11月8日に松本さんが週刊文春との訴訟終結を発表し、所属の吉本興業も活動再開に向けてコメントしただけに、「『まつもtoなかい』に戻す」という可能性が指摘されています。ただ現状では説明責任を求めるなど世間の反発が強く、「言わない」「言えない」という状態の松本さんが人の話を聞くトーク番組のMCを務めるのは難しいでしょう。「視聴者の数が多い日曜ゴールデンタイムのスポンサーが賛同するか」という点も含め、現段階でフジテレビが強行突破のような形を採るとは思えません。

 もともとこの番組の肝は「ゲストに誰と誰をキャスティングするか」でした。制作サイドにしてみれば毎週、「キャスティングするか」というより「キャスティングできるか」というキャスティング力が視聴率と配信数に反映されるハードルの高い仕事。その意味でMCはキャスティングに何らかの貢献できる人がベターでしょう。実際、二宮さんの起用には前事務所の後輩や同世代俳優、ムロさんの起用には親交のある役者仲間を連れてくるようなニュアンスがありました。

 俳優MCはしばらくの間考えづらい。芸人MCも松本さんの代わりとみなされることから微妙。その一方で、芸人→アイドル(タレント、俳優)→専業俳優と続いてきただけに、アーティストやアスリートにガラッと変わる可能性はありそうです。ちなみに番組名が変わってから出演したアーティストはPerfumeと木村カエラさんのみで、アスリートはいません。

二宮もムロもゲスト出演していた

 あるいは、活動ジャンルを超越するような大物タレントの起用もあり得るでしょう。中居さんというテレビにおける最高峰のMCがいるため、スキルよりスケールやインパクトを優先してさまざまなジャンルやキャリアから選べることも番組の強みです。

 そして1つ参考になりそうなのは、二宮さんもムロさんもMC就任前にゲストとして出演していたこと。しかも二宮さんは1月28日にゲスト出演した次の2月4日にMC就任し、ムロさんもその2月4日にゲスト出演してからわずか2か月後の4月14日にMC就任しました。その傾向が続くなら「ムロさんがMCを務めた期間でゲスト出演した人の中に新MCがいる」のでしょうが、はたしてどんな人選になるのか。

 余談ですが、先日フジテレビの関係者数人と雑談していたときMC後任の話になり、「順番的にはアーティストが理想」「まだ芸人は呼びづらいのでは」「ニノが好評だったから再び元ジャニーズはありだろう」などの声があがりました(当然ですが、『だれかtoなかい』の関係者には教えてもらえないので聞いていません)。

 ネット上には新MCの予想に、元SMAPで初回ゲストだった香取慎吾さん、中居さんの後輩で若返りが図れる菊池風磨さん、『うたばん』(TBS系)の再来となる石橋貴明さん、萬匠祐基チーフプロデューサーが『VS嵐』を手がけていた縁で再び“嵐路線”の櫻井翔さんなど、願望込みでさまざまな名前があがっています。

 この番組のMCは知名度の高さに加えて「この人がMCをやるの?」「中居さんとコンビを組むの?」という意外性も求められるだけに、制作サイドにとっては腕の見せどころ。知名度と意外性のあるMCを起用できれば「どんなトークになるのか予想がつかない」という番組の醍醐味を感じられるでしょう。

 注目の発表はムロさんのときがそうだったように、「いくつかのヒントを出して視聴者に予想してもらう」という形式になるかもしれませんが、誰が選ばれるのか今から楽しみです。

【木村隆志】

コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。

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