スポーツ
人生で残酷なことはドラゴンズに教えられた

長寿番組『プロ野球珍プレー・好プレー大賞』の象徴になった“宇野ヘディング事件” ドラファンだから忘れたくない「大切なこと」【中日ドラゴンズに学ぶ人生の教訓】

「宇野ヘディング事件」は珍プレーとして中日ファン、野球ファン以外にも知られている(産経新聞社)

「宇野ヘディング事件」は珍プレーとして中日ファン、野球ファン以外にも知られている(産経新聞社)

 2025年3月に亡くなったみのもんたさんの特徴的なナレーションで人気番組になった『プロ野球珍プレー・好プレー大賞』。この長寿番組を生み出した「プレー」が、中日の宇野勝選手による“ヘディング事件”(1981年)だといわれ、40年以上過ぎた今でも、繰り返しそのシーンが放映されている。半世紀超のドラファンで、『人生で残酷なことはドラゴンズに教えられた』の著者・富坂聰氏(拓殖大学海外事情研究所教授)は、「この出来事には見落とされている重大な問題がある」と同書で綴っている(シリーズ第8回。第1回から読む)。

 * * *
 宇野の話をしよう。宇野といえば、ショートフライを頭に当てた“ヘディング事件”が有名で、中日ファンじゃなくても、もしかしたら野球ファンじゃなくても「知ってる~」となる有名人だ。「頭にボールを当てた人」として。

 フジテレビの人気番組『プロ野球珍プレー・好プレー大賞』が始まったのは、実は宇野のこのプレーがきっかけだとさえいわれている。だとすれば大功労者だ。

 悪名は、無名に勝る、宇野勝──我ながらいい川柳ではないか。いや、悪名ってことはないか。

 中日ドラゴンズなのに全国区。それどころか、球界の枠を飛び超えた大スターの物語はドラファンにとっても誇らしい。

 ただ、ちょっとひっかかる。“ヘディング事件”のインパクトが強すぎて、「本当はとっても守備がうまい」ってことが世の中から忘れられていることだ。それだけじゃない。同じヘディングをやったのに、笑われなかった人がいるっていう点だ。

 その話を始める前に、宇野の“ヘディング事件”を簡単に振り返っておこう。

“ヘディング事件”の大好物シーン

 時は1981年8月26日、後楽園球場での巨人戦だった。

 マウンドに立っていたのは“燃える男”星野仙一。口より先に手が出る前時代的タイプだ。巨人戦には毎度並々ならぬ闘志で挑む星野は、この日、いつにもまして敵愾心のボルテージを上げていた。なんといっても巨人はこの前日までに「158試合連続得点」という腹の立つ記録を打ち立てていて、この中日との試合でさらに更新しようとしていたからだ。

 巨人のV10を阻止した中日のDNAが騒ぐのに加え、巨人キラーを自任する星野は「記録阻止」に燃えていた。「絶対に俺が止める!」と。ドラゴンズの鑑だ。こうして舞台はできあがってゆく。

 燃える男は宣言通り6回まで巨人打線を被安打2、無失点にピシャリと抑え込み、後攻のスコアボードには0が並んだ。ドラファンの興奮も最高潮に達していた。

 そして中日が2点をリードした7回裏──。

関連キーワード

関連記事

トピックス

運転席に座る広末涼子容疑者
《追突事故から4ヶ月》広末涼子(45)撮影中だった「復帰主演映画」の共演者が困惑「降板か代役か、今も結論が出ていない…」
NEWSポストセブン
殺害された二コーリさん(Facebookより)
《湖の底から15歳少女の遺体発見》両腕両脚が切断、背中には麻薬・武装組織の頭文字“PCC”が刻まれ…身柄を確保された“意外な犯人”【ブラジル・サンパウロ州】
NEWSポストセブン
山本由伸の自宅で強盗未遂事件があったと報じられた(左は共同、右はbackgrid/アフロ)
「31億円豪邸の窓ガラスが破壊され…」山本由伸の自宅で強盗未遂事件、昨年11月には付近で「彼女とツーショット報道」も
NEWSポストセブン
佳子さまも被害にあった「ディープフェイク」問題(時事通信フォト)
《佳子さまも標的にされる“ディープフェイク動画”》各国では対策が強化されるなか、日本国内では直接取り締まる法律がない現状 宮内庁に問う「どう対応するのか」
週刊ポスト
『あんぱん』の「朝田三姉妹」を起用するCMが激増
今田美桜、河合優実、原菜乃華『あんぱん』朝田三姉妹が席巻中 CM界の優等生として活躍する朝ドラヒロインたち
女性セブン
東日本大震災発生時、ブルーインパルスは松島基地を離れていた(時事通信フォト)
《津波警報で避難は?》3.11で難を逃れた「ブルーインパルス」現在の居場所は…本日の飛行訓練はキャンセル
NEWSポストセブン
別府港が津波に見舞われる中、尾畠さんは待機中だ
「要請あれば、すぐ行く」別府湾で清掃活動を続ける“スーパーボランティア”尾畠春夫さん(85)に直撃 《日本列島に津波警報が発令》
NEWSポストセブン
宮城県気仙沼市では注意報が警報に変わり、津波予想も1メートルから3メートルに
「街中にサイレンが鳴り響き…」宮城・気仙沼市に旅行中の男性が語る“緊迫の朝” 「一時はネットもつながらず焦った」《日本全国で津波警報》
NEWSポストセブン
モンゴルを公式訪問された天皇皇后両陛下(2025年7月16日、撮影/横田紋子)
《モンゴルご訪問で魅了》皇后雅子さま、「民族衣装風のジャケット」や「”桜色”のセットアップ」など装いに見る“細やかなお気遣い”
夜の街での男女トラブルは社会問題でもある(写真はイメージ/Getty)
「整形費用返済のために…」現役アイドルがメンズエステ店で働くことになったきっかけ、“ストーカー化した”客から逃れるために契約した「格安スマホ」
NEWSポストセブン
大谷家の別荘が問題に直面している(写真/AFLO)
大谷翔平も購入したハワイ豪華リゾートビジネスが問題に直面 14区画中8区画が売れ残り、建設予定地はまるで荒野のような状態 トランプ大統領の影響も
女性セブン
休場が続く横綱・豊昇龍
「3場所で金星8個配給…」それでも横綱・豊昇龍に相撲協会が引退勧告できない複雑な事情 やくみつる氏は「“大豊時代”は、ちょっとイメージしづらい」
週刊ポスト