巧打の1番打者としてヒットを量産した田尾(最多安打3回)。甘いマスクで女性ファンも多かった(時事通信フォト)

巧打の1番打者としてヒットを量産した田尾(最多安打3回)。甘いマスクで女性ファンも多かった(時事通信フォト)

「UNO」と「TAO」が喰らった敬遠攻め

 しかしヘディング事件に関する私の注文は、これで終わりではない。

 知っておいてほしいのは、やはり野球選手としての素晴らしい実績だ。遊撃手としてホームラン王。しかも年間41本塁打の記録は、いまだに破られていない。

 巨人ファンにも分かるように説明すれば、あの坂本勇人選手の絶頂期でも年間の最多本塁打は40本。宇野には届かなかった。

 宇野が本塁打王を獲得したのは1984年。ミスタータイガース・掛布雅之選手とタイトルを分け合っての獲得だ。

 ちなみに、宇野と掛布がホームラン王を争った終盤の中日・阪神戦では、互いにフォアボール攻勢をかけ、2人にバットを振らせなかった。敬遠騒動はスポーツ紙を賑わせた。

 しかし、敬遠で物議を醸すのは、ドラファンとしてはデジャヴだった。というのも、この2年前にも中日が絡んだ“事件”があったからだ。

 田尾安志選手の5打席連続敬遠だ。

 1982年、ドラゴンズの優勝のかかった最終戦。対戦相手は、田尾と首位打者を争っていた長崎啓二選手が所属する大洋だった。前日までに田尾の打率をほんのわずか上回っていた長崎は、この日、スタメンを外れた。

 つまり田尾は、1本のヒットに“逆転”の望みをかける試合だった。それに対して大洋は長崎のタイトルを守るため、田尾にバットを振らせない、つまり敬遠策に徹した。

 まあ、立場が逆ならば中日も同じことをしただろうとは思うのだが、ドラファンには忘れられない試合となった。

 4打席連続で敬遠され怒り心頭の田尾は、迎えた5打席目、とうとう堪えきれずに敬遠球を空振りする。抗議の意思をこめた空振りだった。審判の「ストライク」のコールが虚しく球場に響いた瞬間、観客席がドッと沸いた。

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