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瀬尾まいこさん、家族のあり方と幸福のありかを綴る新しい家族小説『ありか』インタビュー「親だけが子どもを育てなきゃいけないわけじゃないと思う」

『ありか』/水鈴社/1980円

『ありか』/水鈴社/1980円

【著者インタビュー】瀬尾まいこさん/『ありか』/水鈴社/1980円

【本の内容】
 5歳の娘・ひかりをシングルマザーとして育てている美空は思う。シングルマザーとして美空を育てた母親が口にしていた《「子どもができたら、親の恩が痛いほどわかる」/「どれだけのことをしてもらったか、親になってから知るんだよ」》という言葉は、《母親にとって子育てが相当の負担だったからではないだろうか。そして、それは私が愛すべき存在ではなかったからではないだろうかと》。母との関係性に悩む美空、すくすくと育つひかり、そして夫と離婚した後も何かと家にやって来て世話を焼く、義弟颯斗。家族のあり方と幸福のありかを綴った新しい家族小説。

娘に育てられている感覚は 私自身もすごく大きい

 母と娘の話であり、ふたりを取り巻く優しい人たちとの話でもある。

 さまざまな家族のかたちを書いてきた瀬尾さんだが、血のつながった親子を軸にして書くのは意外にも今回が初めてだそう。

「意識したことはなかったですが、血縁のある、ふつうの親子を書くのは初めてだったようです。

 担当してくださった水鈴社の編集者の方がうちの娘を小さい頃からご存じで、『いつか瀬尾さんとお嬢さんの話を読みたいです』とおっしゃってくださっていたので、今回、水鈴社さんで書くことになったとき、『じゃあ娘の話を書こうかな』と思って書きました」

 小説の美空はシングルマザーで、化粧品の工場で働きながら5歳の娘ひかりを育てている。瀬尾さんのお嬢さんは小学6年生なので、設定の細部はいろいろ違っているが、親子の会話やひかりの入院など、実際にあった出来事が反映されている場面もある。

 ひかりはママが大好きで、素直な気持ちを表し、かわいい。

「うちの娘もめちゃくちゃかわいいです。私自身はそんなにかわいい子じゃなかったので、びっくりします。もう小6なんですけど、こないだも自分の枕と私の枕をぴったりくっつけて、『寝るときママと1ミリも空いてない。やったー!』って喜んでました。『ギュッてしてくれたら宿題する』『ギュッてしてくれたら片づける』としょっちゅう言ってて、『子どもってこんなに母親が好きなんや』って驚いてばかりです。『ママかわいい』と言うから、『ママかわいくないから、よそで言うたらあかんで』と言ったんですけど、『なんでそんなこと言うの?』と本気でびっくりするんですよ。いったい娘の目には私がどう見えてんのかなと思います」

 ひかりの存在が、美空を不安にし、一方で穏やかにもする。ひかりを育てながら、美空自身も育てられている部分があることも、小説は描く。

「娘に育てられている感覚というのは私自身もすごく大きいです。それまでは仕事が一緒とか、趣味が一緒でつながって友だちになってたけど、子どもができて、子どもを通して知り合った人と友だちになって、知らなかった世界が広がっていきました。私とは違って娘はまったく人見知りせず、躊躇なくいろんなところに入っていくので、娘に引っ張られていろんな輪に入っていけるようになりました」

 浮気されて離婚した夫の奏多を頼れず、実の母親との関係もよくない美空だが、ママ友の三池や、パート先の工場の同僚宮崎は、さりげなく美空を支えてくれる。人に頼るのが苦手な美空も、徐々に、彼女たちの好意を受け取れるようになる。

「三池さんのモデルは娘が幼稚園の時のママ友で、本当に小説に出てくる感じの、めちゃくちゃ美人で、サングラスかけてポルシェに乗ってます。段取り命で、本を送ったら『発売日に買った』『いまみんなに宣伝して買わせてるで』って(笑い)」

 最初近づきがたかった彼女と仲良くなったのは、幼稚園最後の年の謝恩会がきっかけだそう。劇の脚本を瀬尾さんが書くことになり、謝恩会委員ではない三池さんのモデルのママが手伝ってくれた。時間厳守の決まりだったため、サイゼリヤでせりふを言い合って、細かく台本を書き直した。

 サングラスをかけている理由も、小説の三池さん同様、じつは人見知りで、目が泳いで挙動不審になるのがバレないこと、話しかけられずにすむことだったらしい。

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