かつて長嶋茂雄さんと三遊間を守った広岡達朗氏
広岡氏は「現役時代の長嶋は巨人、いや野球界全体に貢献した」と評価を惜しまなかった。その一方で、引退後の長嶋氏の“失敗”にも言及する。
「残念なのは巨人軍の監督として野球界に巨人軍魂を伝えることができなかったことです。“巨人の野球はこうあるべきだ”と伝えることができなかった。他からいい選手を獲ることができればチームは強くなるが、適当な選手を獲ったらダメになる。そんな野球にしてしまった。35歳を超えた選手を獲るのではなく、巨人魂がわかる“第二の長嶋”を育ててもらいたかった。そこが残念だね」
引退からは実に半世紀が過ぎ、長嶋氏も鬼籍に入った。それでもなお“第二の長嶋”が望まれるほどに、「ミスタープロ野球」の存在は大きかったということでもあるのだろう。
【プロフィール】
鵜飼克郎(うかい・よしろう)/1957年、兵庫県生まれ。『週刊ポスト』記者として、スポーツ、社会問題を中心に幅広く取材活動を重ね、特に野球界、角界の深奥に斬り込んだ数々のスクープで話題を集めた。著書に8競技のベテラン審判員の証言を集めた『審判はつらいよ』(小学館新書)などがある。新著『巨人V9の真実』には、長嶋茂雄氏、王貞治氏、金田正一氏らの貴重な証言の数々が収録されている。