ボウヤーが出版した“暴露本”の書影。6章に大谷と一平との出来事について書いている
ボウヤーが記した「プロのアスリートを狙う理由」
ボウヤーは水原と出会った経緯について、おおよそ次のような内容を記している。
〈ボウヤーの仕事の仲介者であるA氏が、元エンゼルスのデイビッド・フレッチャー内野手と高校の同級生で、友人関係にあった。そのA氏とフレッチャーを通じて、ボウヤーはエンゼルスのメンバーと直接会う機会を得た。そのひとつが、2021年9月、カリフォルニア州サンディエゴで行なわれたエンゼルス関係者とのポーカーゲームだった。水原とはこの場で初めて出会った〉
当時、約700人の顧客がいたと明かすボウヤー。その中でも、エンゼルスメンバーとの出会いの機会は彼にとって魅力的だったようだ。
〈プロのアスリートと繋がる機会を逃すわけにはいかなかった。なぜなら、まず第一に、彼らは非常に競争心が強いから。第二に、十分な可処分所得があり、それを賭けに費やせるからだ〉(「RECALIBRATE」より翻訳して引用)
そうして臨んだポーカーで、ボウヤーは水原と出会い、胴元と顧客の関係になった。ボウヤーは私の取材に対し、「一平との賭けを始める際、翔平のカネを盗んで送金するなんて想像もしなかった」と語っているが、結果的に水原は負け続け、その総額は約1億8293万ドル(約284億円)にも膨らんだ。
2024年1月、ボウヤーはESPNの女性記者の取材を受け、大谷が賭博に関与している疑惑を追っていることを知らされる。これを機に捜査当局に出向き、大谷の口座から送金があった事実を打ち明けたという。同年3月、ESPNのスクープによって事件は明るみに出たが、その後の報道については不満があったようだ。同書にはこう書かれている。
〈ジャーナリストたちにとって、一平ただ1人ではニュースにはならない。広告収入を維持するため、ESPNの記者たちは翔平を“物語”に巻き込む必要があった。そして、私はその全てに巻き込まれてしまった〉
〈彼らはブックメーカーを「捕食的」と表現し、私たちが無実の人々に対して、全財産を賭けさせるよう圧力をかけているかのように説明した。これほど事実からかけ離れた話はありません〉(翻訳して引用)
こう記してはいるが、大谷の口座からの送金だということをわかった上で、水原に賭けさせ続け、大谷のカネを受け取っていた事実は変わらないだろう。ボウヤーは、水原からの送金が「他のどの顧客からの送金よりも高額だった」ことを明かしている。