放送法をめぐる文書について答弁する高市早苗氏(2023年。写真/共同通信社)
高市早苗・総裁が就任した自民党について、新聞やテレビは軒並み崖っぷちであると報じるなど、大メディアの“高市ぎらい”とも呼ぶべき実態が伺える。就任直後の世論調査では「期待する」という声が大半だったことを考えると世論とのズレが浮き上がる。“高市ぎらい”に至った裏側には一体何があるのか。【前後編の後編。前編から読む】
総務大臣時代の「電波停止」発言が影響
深刻なのはテレビだろう。
評論家で国際政治学者の藤井厳喜氏は新聞・テレビの“高市ぎらい”の原点は、総務大臣時代の「電波停止」発言が影響していると指摘する。
安倍政権下の2016年2月8日の衆院予算委員会で、総務大臣だった高市氏は野党議員の質問に「放送局が政治的な公平性を欠く放送を繰り返し、行政指導しても全く改善されない場合、それに対して何の対応もしないと約束するわけにいかない」と答弁し、政府が放送局に電波停止を命じる可能性に言及した。この高市答弁は「放送・報道への権力介入」との批判を浴び、国会は大紛糾したのだ。
「大新聞と民放キー局はそれぞれ系列関係にあるから、大メディアは高市氏を目の敵にするようになり、電波停止発言への批判を何度も繰り返し報じてきた」(藤井氏)
この問題は高市氏が岸田政権の経済安保大臣だった2023年にも再燃した。
立憲民主党の小西洋之・代議士が安倍政権時代に官邸と総務省が放送法の解釈についてやりとりした内部文書を公表、そのなかには当時の高市総務大臣への報告記録も含まれていた。