ミカさんは2024年4月、自宅近くの州立公園で拳銃により自ら命を絶った(遺族による追悼サイトより)
ついに起訴──法廷で問われる「支配」
12月18日、サウスカロライナ州の大陪審は、ジョン・ポール・ミラー被告をサイバーストーキングなどの罪で起訴した。裁判は2026年1月12日開始予定。有罪となれば、最大5年の禁固刑が科される可能性がある。
注目されるのは、この裁判が「自殺」ではなく、その前段階にあった支配行為そのものを裁こうとしている点だ。この事件の本質は、単なる夫婦喧嘩でも、突発的な悲劇でもない。専門家が指摘するのは、ドメスティック・バイオレンスの一形態「コアーシブ・コントロール(強制的支配)」である。
殴らない。だが、羞恥で縛り、監視で追い詰め、恐怖で逃げ道を塞ぐ──DV問題に詳しい米専門家は言う。
「これは“見えない暴力”の完成形です。被害者は次第に、抵抗する気力そのものを奪われていく」
信仰を掲げる男のもとで、若い妻は自由を奪われ、孤立し、そして命を落とした。
法廷で何が語られるのか。この事件は、宗教、結婚、そしてデジタル時代の暴力という重い問いを、私たちに突きつけている。
◆高濱賛(在米ジャーナリスト)
