2011年10月27日、外国為替のディーリングルームに表示された1ドル=75円台の円高を示す電光ボード(時事通信フォト)
繰り返すが原材料高、エネルギー価格や物流費の高騰、そして円安で限界が来ている。日本に限れば「デフレビジネスの終焉」と言っていいだろう。
冒頭の100円ショップ店主は「最後に削るのは人間」としてこう話す。
「大手チェーンはセルフレジにして、とにかく店員を置かない方針を進めるだろうね。100円ショップに限らないけど単価が安いぶん他の業種より人件費がシャレにならない。いまやアルバイトひとり配置するだけでどんだけ売らなきゃいけないんだって話だよ。時給も上がっているし」
実際、いわゆる「デフレ勝ち組」企業はとくにセルフレジ導入に熱心だ。置くだけで合計金額が出て会計の済む大手ファストファッションチェーンもある。商品を絞り、すべて自社開発だから可能な話だが、これからAIの進化も手伝って、さらなる店舗の「人間削減」が進むのだろう。
「でも100円ショップではそんなに簡単にはいかないだろうね。とにかく品数も雑多で大きさとか重さとかまちまちだし、大手(100円ショップ)さんだと行列ができてトラブルなんてのもあるよ」(100円ショップ店主)
人件費もまた昨今の賃金引き上げや社会保険料の高騰(会社負担分)で厳しい選択を企業が迫られている。何十年もデフレを認めず放置し、昨今の物価高への対応も遅れ、社会保険料も右肩上がり、政治が本当にあてにならないからこその厳しい選択でもある。
私たちの暮らしになくてはならない存在となった100円ショップの苦悩と、その100円という呪縛。たかが一業種と思うなかれ、暮らしになくてはならない存在だからこそ、私たちの暮らしのあわせ鏡でもある。
世界の主要国で唯一、実質賃金上昇率で遅れをとったままの日本、失われた30年の果てに染みついたデフレマインドからの脱却もまた政府や企業、そして私たち消費者全体の課題と思う。
●日野百草(ひの・ひゃくそう)/出版社勤務を経て、内外の社会問題や社会倫理、近現代史や現代文化のルポルタージュやコラム、文芸評伝を執筆。日本ペンクラブ広報委員会委員、芸術修士(MFA)。
