スポーツ

大阪桐蔭の藤浪はテストで500点中400後半取る優等生との評

 毎夏、日本中を熱狂させる高校野球の甲子園大会。プロ野球に入って活躍する選手がいる一方、決して成功とは言えない形で球界を去る人もいる。夢を抱く高校球児たちと球界を去った元選手たちの光と影を作家の山藤章一郎氏が報告する。

 * * *
「私、いまだに夢見るんですよ。野球のね、裏方のね」

 ストライクが入らない。注文どおりの変化球が投げられない。56歳になる松浦正さんは、中日と南海で10年ピッチャーをやり、その後、49歳まで21年間打撃投手を務めた。現在、浜松で従業員4人の居酒屋の雇われ店長。ラーメンサラダ600円。チャンジャ(タラの塩辛)380円。妻をがんで喪い、3人の子を育てた。九州小倉出身。

「野球バカですけ。ほら、こう肘が曲がってるっしょ。打撃投手だから、毎日ひと試合完投分120球ほど投げて。とにかく、腕、肘が痛くても、女房子ども養なわんといけんからね。炎症、腫れ、痛み吹き飛ばすボルタレンを口に放りこんで。副作用に吐き気とかあるんやけど、どうでもええ」

 その、薬の大量服用と肘の曲がりが、〈球とバット〉でめしを食ってきた勲章だという。

「いまだに秋ちゅうのが嫌いや。オレらみたいな中途半端な人間は、来年はもういらんとクビになるやらしれん。ドラフトが始まる秋は1年契約の更改時期や。もうドキドキよ。そんな夢も見る」

 49歳で、ボルタレンも効かぬ骨折の痛みで、球界を去った。160キロを出した大谷翔平(花巻東)の話を向けると、高校生からプロに入る者の心構えのことになった。流されるな。研究熱心でいろ。どういう思いでプロに入ったか、いつも自問自答せよ。酒と女にはことに警戒せよ、と。松浦さんは、自分の居酒屋を九州で持ちたいと思っている。現在は無休。午後3時に開け、深夜を過ぎて部屋に帰り着く。

「居酒屋も野球とおんなじよ。とにかく声出して、一生懸命動きまわって感動を与える仕事やで」

 大阪・舞洲球場――。中日の中田・米村の両スカウトも野球にたずさわれる好運に感謝する。この日は、花巻東の大谷と並んで今大会の超目玉・大阪桐蔭の藤浪晋太郎投手を見に来ていた。

「藤浪は頭がいい。学科も5教科500点満点で、400点後半を取る。それが野球にも出てます。制球が算数で計算したように実に考えられているんです。そんなん見られる。幸せです」

 なにを教えなくとも、体が成長すれば活躍する技術を持った選手を獲得したい。スカウトはそのために試合、学校に足繁く通う。

「中日の先発エース・吉見一起の入団前の試合も全部見ました。追っかけです。スカウトと選手は、将来の親子です」

『プロ野球スカウトが教える一流になる選手消える選手』(上田武司、祥伝社黄金文庫)に、伸びる選手を見分ける法が綴られている。上田氏は巨人に44年間、選手、コーチ、スカウトで在籍し、高橋由伸や内海哲也を見出した。ひとつだけいう。母親の尻を見ろと。

「内海のお母さんはどっしりとした実にいいお尻をしていました」「高校生の内海」「鍛えればお母さん以上のお尻にできる」「選手が伸びるかどうかは、下半身がしっかりしていること、これが一番の条件です」

※週刊ポスト2012年8月31日号

トピックス

STARTO ENTERTAINMENTの取締役CMOを退任することがわかった井ノ原快彦
《STARTO社取締役を退任》井ノ原快彦、国分太一の“コンプラ違反”に悲しみ…ジャニー喜多川氏の「家族葬」では一緒に司会
NEWSポストセブン
東京都内の映画館で流されたオンラインカジノの違法性を訴える警察庁の広報動画=東京都新宿区[警察庁提供](時事通信フォト)
《フジ社員だけじゃない》オンラインカジノ捜査に警察が示した「本気度」 次のターゲットはインフルエンサーか、280億円以上つぎ込んだ男は逮捕
NEWSポストセブン
国民民主党から公認を取り消された山尾志桜里氏の去就が注目されている(時事通信フォト)
「国政に再挑戦する意志に変わりはございません」山尾志桜里氏が国民民主と“怒りの完全決別”《榛葉幹事長からの政策顧問就任打診は「お断り申し上げました」》
NEWSポストセブン
中居正広氏と被害女性の関係性を理解するうえで重大な“証拠”を独占入手
【スクープ入手】中居正広氏と被害女性との“事案後のメール”公開 中居氏の「嫌な思いをさせちゃったね。ごめんなさい」の返事が明らかに
週刊ポスト
参政党の神谷宗幣・代表(時事通信フォト)
《自民・れいわ・維新の票を食った》都議選で大躍進「参政党現象」の実態 「流れたのは“無党派層”ではなく“無関心層”」で、単なる「極右勢力の台頭」と言い切れない本質
週刊ポスト
苦境に立たされているフジの清水賢治社長(左/時事通信フォト)、書類送検された山本賢太アナ(右=フジホームページより)
“オンカジ汚染”のフジテレビに迫る2つの危機 芋づる式に社員が摘発の懸念、モノ言う株主からさらに“ガバナンス不全”追及も
週刊ポスト
24時間テレビの募金を不正に着服した日本海テレビ社員の公判が行われた
「募金額をコントロールしたかった」24時間テレビ・チャリティー募金着服男の“身勝手すぎる言い分”「上司に怒られるのも嫌で…」【第2回公判】
NEWSポストセブン
妻とは2015年に結婚した国分太一
「“俺はイジる側” “キツいイジリは愛情の裏返し”という意識を感じた」テレビ局関係者が証言する国分太一の「感覚」
NEWSポストセブン
衝撃を与えた日本テレビ系列局元幹部の寄付金着服(時事通信フォト)
《24時間テレビ寄付金着服男の公判》「小遣いは月に6〜10万円」夫を庇った“妻の言い分”「発覚後、夫は一睡もできないパニックに…」
NEWSポストセブン
TOKIOの国分太一
【スタッフ証言】「DASH村で『やっとだよ』と…」収録現場で目撃した国分太一の意外な側面と、城島・松岡との微妙な関係「“みてみぬふり”をしていたのでは…」《TOKIOが即解散に至った「4年間の積み重ね」》
NEWSポストセブン
警視庁を出る鈴木善貴容疑者=23日午前9時54分(右・Instagramより)
「はいオワター まじオワター」「給料全滅」 フジテレビ鈴木容疑者オンカジ賭博で逮捕、SNSで1000万円超の“借金地獄”を吐露《阿鼻叫喚の“裏アカ”投稿内容》
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 中居正広と元フジ女性アナの「メール」全面公開ほか
「週刊ポスト」本日発売! 中居正広と元フジ女性アナの「メール」全面公開ほか
NEWSポストセブン