国内

勝谷誠彦氏「この国の根幹はごく普通の街場の日本人の底力」

 今、日本人は皆一様に将来に不安を抱えている。世論調査会社IPSOSが23か国で調査したところ、日本人の86%が将来に不安を感じており、各国中最高値だったという。ところが、この数値に対して外国人たちは首を傾げているのだ。日本はダメではない、日本人の未来は暗くないと彼らは見ている。

『メルマガNEWSポストセブンVol.37』にて、コラムニストの勝谷誠彦氏が、このギャップについて分析している。現在ここでは2回に分けその全文を公開中だ。

 大マスコミによる“自虐世論”に皆、騙されているだけではないのか? 各地での講演会に集まる人々の熱気に触れ、氏は語る“「ひょっとすると…」と、ある時私は立ち止まって考えたのだった。「日本国はいま、かなり元気なのではないか。世界の中でも恵まれた国ではないのか」と。”

 * * *
 ふと思いついたこのことをパブに溜まっていた知り合いの外国人のジャーナリストやビジネスマンたちにぶつけてみた。もちろん、中国韓国以外の、である。すると一様に「今ごろ気づいたの?」と笑うではないか。

 外資系のファンドマネジャーが言った。「円高というのは、日本国が買われているからでしょう」。到着したばかりのニュースを見せてくれる。クレディ・スイスという銀行が、日本には純資産100万ドル(8000万円)を超える富裕層が360万人いて、アメリカに次いで2位だと書かれている。「マジ?」「そうだよ。しかもクレディ・スイスは5年後には540万人になると言っている」

 あっ、そうか、と私は気づいた。これこそ円高の恩恵なのだ。ドル換算で比べているからであって、今後も増加するというのは、円が更に高くなることも折り込んでいるに違いない。「じゃあ、海外に出れば、日本人は金持ちなんだ」というと、アメリカ人のジャーナリストが割り込んできた。「日本では正社員じゃない人が200万円しか年収がないって泣いているらしいけど、これはドルにしたら2万5000ドル。アメリカだとドンピシャの中間層だよ。倍も出せば郊外に家が買えるよ」「マジ?」馬鹿のひとつ覚えである。

 あきれた顔をして彼が続けた。「国民皆保険で、生活保護がもらえて、安くて旨いレストランがそこらじゅうにある。あらゆるエンタテインメントを楽しめて、治安も良い。こんないい国はないよ。アメリカの財政は破綻状態だし、欧州はあの通り。中国なんて羨ましくもないだろ? つまり、日本は今やひとり勝ち。著名なエコノミストたちもみんなそう言っているよ」う~ん。

「外交的にもいいポジションなのよ」と教えてくれたのは女性大使館員だ。「明治時代に、日本が諸外国から評価されたのは、相対的に隣国があまりにひどいありさまだったからでしょ。清朝は四分五裂だったし、朝鮮は頑迷で内紛を繰り返し近代国家の体をなしていなかった。だからユキチ・フクザワも『ダツア・ニュウオウ』と言ったのよ」

 まさかフランス人から諭吉翁の『脱亜入欧』について説かれようとは思わなかった。彼女が続ける。

「各国はいまの中国と韓国の非礼についてちゃんと見ているわ。外交は儀礼の世界だから。あの二つの国は、近代国家としてつきあえないと感じているの。それに対して自制している日本は尊敬されているのよ」

 そうかなあ。自制どころかトホホな状態だと私は感じるが、まあ褒められて悪い気はしない。明治の話を持ちだされると、なるほどという気にもなる。中国や韓国は自滅しているわけだ。

 そう思って振り返ってみると、ロンドン五輪での若きアスリートたちの言動は鮮やかだった。山中伸弥教授に続く、ノーベル賞候補もまだまだいるらしい。私の中高の同級生にも噂があるくらいだ(ホント・笑)。少し前には『はやぶさ』の偉業に世界が驚いた。

 東日本大震災や福島原発事故にしても「外国の人々は驚いている」というのである。「やはり大地震に見舞われたハイチなんかは、もう国家として立ち直れない状態だよ。日本の復興のスピードは驚異だ。原発事故だって、日本人だからこそああやって抑え込めたのさ」とアメリカ人ジャーナースト。

「でも、その復興にしても予算の流用がバレたばかりだし、原発事故では東電はまだ情報を隠しているし…」
 私が嘆くと、フランスから来た美人外交官はウインクをした。
「だから、政治家や官僚や大企業はホントにダメなのよ。なのにちゃんとやっていけているから、日本はミラクルなの!」

 喜んでいいのか、馬鹿にされているのか。しかし、少なくとも、それは中心に皇室があって、その存在の前では誠実で一生懸命であろうという、ごく普通の街場の日本人の底力だろうとは感じた。

 私の馬鹿話を聞きに来てくれている、あの善良な人々から押し寄せてくる、元気オーラのように。

※メルマガNEWSポストセブンVol.37

関連記事

トピックス

全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト