芸能

本、映画ヒット大泉洋 北海道発“ローカルタレント”の強み分析

 4月に発売されたエッセイ『大泉エッセイ~僕が綴った16年~』はたちまちベストセラー。先日、公開された主演映画『探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点』も大ヒットしている、大泉洋(40才)。俳優? お笑いタレント? 肩書きさえはっきりしないこの男の人気はどこからくるのだろうか?

 そもそも彼の芸能活動の始まりは約20年前、北海道の大学時代までさかのぼる。演劇研究会のメンバーと「TEAM NACS」を結成。在学中、役者としての活動を続けるかたわら、ローカル深夜番組『水曜どうでしょう』に出演した。

 深夜バスだけの旅、原付バイクで東日本を縦断など、何でもありの企画のなかで、軽快なフリートークや物まね、神がかり的なハプニングなど、天性のタレント性を発揮。1996年から2002年までの6年間のレギュラー放送で、北海道では知らない人がいないほどの人気タレントになっていく。

「この頃、北海道のCMやテレビ、雑誌に引っ張りだこでした。彼がデザインされたグッズやスープカレーなどもショップに並べられ、飛ぶように売れていましたしね。親しみやすいおにいちゃん的な雰囲気が地元で愛されたんだと思います」(北海道の情報誌編集者)

 全国進出のきっかけをつかんだのは、初のレギュラードラマ『救命病棟24時』(フジテレビ系)。江口洋介、松嶋菜々子といった大物俳優に混じって、看護師役を熱演した。

「第1回の視聴率をみて、スタッフは“大泉洋は北海道でこんなに人気があるのか”と驚いたそうです。北海道地区では関東地方に比べて約7%も高く、28%を超えた。“数字”を持っているうえ、長年、舞台で経験を積んでいるから演技力もある。ドラマ業界では、彼を起用したいという声が高まっていきました」(民放のドラマ関係者)

 その後、『ハケンの品格』(日本テレビ系)、『龍馬伝』(NHK)などのドラマや、『アフタスクール』『ゲゲゲの鬼太郎』といった映画など、多くの話題作に出演。次第に活躍の場を北海道から全国に広げていく。

 昨年、公開された北海道を舞台にした主演映画『探偵はBARにいる』では、探偵役を好演。5月11日に公開されたパート2は、公開後2日間で約11万7000人を動員し、興行収入約1億5500万円の好スタートを切っている。

 役者としての大泉は、バラエティーで見せるようなコミカルな表情を見せることもあれば、時にはシリアスなシーンを演じきる。軽快なアクションをこなすことも。ヒット作となった『探偵はBARにいる』は、そうした彼の幅広い魅力が凝縮された作品といっていい。

「どんな役でも演じられるのは彼の強みです。それに“受けの芝居”がうまく、共演する相手を選ばない。松田龍平のようなクセのある役者でもいいし、ジャニーズのようなイケメンでも、相手のキャラをつぶさず、自分の良さを発揮しながら作品全体のテンポを良くすることができるんです」(コラムニストのペリー荻野さん)

 そして、大泉が他の地方発のタレントと異なるのは、これだけ全国での活動が増えた今でも、北海道でのタレント活動を続けている点にある。現在、北海道では10年前とほぼ同じ数のテレビ、ラジオのレギュラー番組を抱えている。

「大泉さんはローカルタレントといっても、それをあえて強調したりしないから、全国放送のバラエティーやドラマでも違和感なくスッと入っていける不思議なところがあります。その一方で、あくまで北海道を拠点としているというスタンスだから、タレントとして“消費”されにくい、飽きられにくいという面もあるでしょう」(前出・ペリーさん)

 大泉自身、『大泉エッセイ』の中で、ローカルタレントに対する“こだわり”についてこんなふうに綴っている。

<今でも北海道の「ローカルタレント」と名乗っていたいという、自分はいる。その方がかっこいい、と私は思っているからだ。基本、北海道で活動しながら、全国区の仕事もする。他の全国区のタレントとは違う見え方をする存在でいたいのだ>

 出世作『水曜どうでしょう』の新シリーズが年内にも放送される予定。3年ぶりの新作でどんなローカルタレントぶりを見せてくれるのだろうか。

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