芸能

草なぎ・長瀬・木村 中年ジャニーズのドラマに奥行き感あり

 今期も話題のドラマ戦線、作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏は、3人の主演俳優に着目した。

 * * *
 いよいよ出そろった秋のドラマ。独身貴族に、3億円事件、アンドロイド。個性的で目が離せないラインナップになっています。

 これまで度々指摘されてきたことですが、主役の座をジャニーズが席巻。ただし、演技力ひとつないアイドルが女の子人気をあてこんで……というキャスティングとは、ひと味違うトーンがじわっと滲み出しています。

 木曜日の草なぎ剛、金曜日の長瀬智也、日曜日の木村拓哉。

 アイドルもそれぞれ年齢を重ねながら、役作りに向き合っている。現場体験のみならず、出会いや別れ、失敗や人生の辛酸をなめてきた経験によって、陰影が出てきた中年ジャニーズが競い合っています。

 まず、草なぎ剛主演の『独身貴族』(木曜日フジ系午後10時)。美食三昧の独身貴族、映画制作会社社長を演じる草なぎ剛。金はあってもバブル時代と違い、どこか浮かれていない。生活へのこだわりや経営の苦労が見え隠れする。黙っている時、その横顔にペーソスと孤独感とが漂う。そんな難しい存在感を、上手に表現しています。

 何と言ってもこのドラマ、背骨にあるのは「映画へのオマージュ」。シャレたオープニングロール、「エデンの東」「シャレード」などのBGM、映画のワンシーンなどが挿入され、様々な映画的引用が仕込まれている。そんな大人の遊び心が、よくあるラブコメディの稚拙さや粗さを制御し、秀逸なトーンに仕上がっています。

 一方に、悪徳刑事が躍動する『クロコーチ』(金曜日TBS系午後10時)。長瀬智也演じる、クセのある刑事・黒河内。すっトボケたキャラと野獣のような荒々しさを併せ持つ人物。

 敢えて低く抑えた発声、ゆっくり間をとるしゃべり方、鋭い目つき。独特な人物造形をする長瀬智也。正義と悪役とを計算した演技が光ります。新人刑事・剛力彩芽とのとりあわせも「美女と野獣」的なコントラストで楽しい。

 このドラマ、凶悪犯人を追う表のストーリーの後に、昭和のあの未解決事件「3億円事件」の謎がある。緊張に満ちた伏線、その時空間の奥深さ。当時のモノクロニュース映像が挿入されたりしてスリリング。その意味で、このドラマの背骨を支えているのは「社会的事件への接近」でしょう。

 上記二つとはまた色合いの違う、キムタク主演の『安堂ロイド~A.I. knows LOVE?~』(TBS日曜午後9時)。天才物理学者と100年先の未来から送り込まれてきたアンドロイド、1人2役を演じ分けるキムタク。

 物理学者と、ツルリと無機質な質感が際立つ安堂ロイドの美しさの対比。柴咲コウとの絶妙なやりとりによってそれを際立たせるあたりが、このドラマのツボでしょう。

「一昔前のハリウッドのSF映画の劣化版」、「ターミネーターの焼き直し」といった酷評も聞かれますが、はたしてそうでしょうか。アンドロイドといったSF的設定も、キムタクが人物を演じ分ける手腕を見せるための仕掛けにすぎない。ドラマのテーマはズバリ、「純愛への憧れ」でしょう。

 まさしく三者三様。テーマも「映画へのオマージュ」、「社会的事件への接近」、「純愛への憧れ」と多彩。

 そんじょそこらのジャリタレには真似できない、中年ジャニーズたちの奥行き感ある仕事ぶり。秋が深まりつつあるこの季節、3人の主役を見比べ味わい分けることこそ、最も贅沢なドラマの楽しみ方ではないでしょうか。

関連記事

トピックス

解散を発表したTOKIO(HPより)
「TOKIOを舐めるんじゃない!」電撃解散きっかけの国分太一が「どうしても許せなかった」プロとしての“プライド” ミスしたスタッフにもフォロー
NEWSポストセブン
教員ら10名ほどが集まって結成された”盗撮愛好家グループ”とは──(写真左:時事通信フォト)
〈機会があってうらやましいです〉教師約10人参加の“児童盗撮愛好家グループ”の“鬼畜なやりとり”、教育委員会は「(容疑者は)普通の先生」「こういった類いの不祥事は事前に認知が難しい」
NEWSポストセブン
警視庁を出る鈴木善貴容疑者=23日午前9時54分(右・Instagramより)
「はいオワター まじオワター」「給料全滅」 フジテレビ鈴木容疑者オンカジ賭博で逮捕、SNSで1000万円超の“借金地獄”を吐露《阿鼻叫喚の“裏アカ”投稿内容》
NEWSポストセブン
大手芸能事務所の「研音」に移籍した宮野真守
《異例の”VIP待遇”》「マネージャー3名体制」「専用の送迎車」期待を背負い好スタート、新天地の宮野真守は“イケボ売り”から“ビジュアル推し”にシフトか
NEWSポストセブン
「最近、嬉しかったのが女性のファンの方が増えたことです」
渡邊渚さんが明かす初写真集『水平線』海外ロケの舞台裏「タイトルはこれからの未来への希望を込めてつけました」
NEWSポストセブン
4月12日の夜・広島県府中町の水分峡森林公園で殺害された里見誠さん(Xより)
《未成年強盗殺人》殺害された “ポルシェ愛好家の52歳エリート証券マン”と“出頭した18歳女”の接点とは「(事件)当日まで都内にいた」「“重要な約束”があったとしか思えない」
NEWSポストセブン
「父としての自覚」が芽生え始めた小室さん
「よろしかったらお名刺を…!」“1億円新居”ローン返済中の小室圭さん、晩餐会で精力的に振る舞った理由【眞子さんに見せるパパの背中】
NEWSポストセブン
多忙なスケジュールのブラジル公式訪問を終えられた佳子さま(時事通信フォト)
《体育会系の佳子さま》体調優れず予定取り止めも…ブラジル過酷日程を完遂した体力づくり「小中高とフィギュアスケート」「赤坂御用地でジョギング」
NEWSポストセブン
麻薬密売容疑でマグダレナ・サドロ被告(30)が逮捕された(「ラブ・アイランド」HPより)
ドバイ拠点・麻薬カルテルの美しすぎるブレイン“バービー”に有罪判決、総額103億円のコカイン密売事件「マトリックス作戦」の攻防《英国史上最大の麻薬事件》
NEWSポストセブン
広島県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年6月、広島県。撮影/JMPA)
皇后雅子さま、広島ご訪問で見せたグレーのセットアップ 31年前の装いと共通する「祈りの品格」 
NEWSポストセブン
無期限の活動休止を発表した国分太一(50)。地元でもショックの声が──
《地元にも波紋》「デビュー前はそこの公園で不良仲間とよくだべってたよ」国分太一の知られざる “ヤンチャなTOKIO前夜” 同級生も落胆「アイツだけは不祥事起こさないと…」 【無期限活動停止を発表】
NEWSポストセブン
出廷した水原被告(右は妻とともに住んでいたニューポートビーチの自宅)
《水原一平がついに収監》最愛の妻・Aさんが姿を消した…「両親を亡くし、家族は一平さんだけ」刑務所行きの夫を待ち受ける「囚人同士の性的嫌がらせ」
NEWSポストセブン