ただし、以前に比べて名勝負と呼べるようなレースが少なくなっているとは言えるかもしれない。その要因のひとつとして考えられるのは、世代を代表するような有力馬が同一レースに揃わないことがあげられる。
たとえば、「TTG」と呼ばれたテンポイント、トウショウボーイ、グリーングラスや、クラシック三冠を分け合ったウイニングチケット、ビワハヤヒデ、ナリタタイシンの三頭は、あらゆるレースでしのぎを削り合った。歴代のスターホースには必ずといっていいほど強力なライバルが二頭ぐらいいたんだ。
また、1990年代から2000年代前半にかけてサンデーサイレンス産駒が活躍していた頃は、とにかく高いレベルの競走馬が揃っていた。サンデーサイレンスの子は、繁殖牝馬の血統配合が多少悪くても、未勝利で引退していく馬は少なかった。たとえ調教時などに乗り味が良くなくても、レースともなれば抜群の末脚を発揮するような馬が多かったんだ。だから全体的なレベルは高かった。
現在は「ディープインパクトの仔がよく走る」と言われるけれど、種付け料が高騰するあまり、それなりの繁殖牝馬しか付けられない現実がある。そりゃあ走るに決まっているよ。
だけど、種付けの絶対数が少ないから、全体的なレベルを底上げするまでにはいたっていない。今年のダービーを勝ったディープの仔であるキズナ、菊花賞に勝ったエピファネイアに肉薄するような馬がもっと出てくれば、競馬界もいくらか面白くなっていくだろうね。
※週刊ポスト2013年12月6日号